「酒は百薬の長」ということで飲酒をすすめる風潮もあるようですが、はたして酒は本当に百薬の長なのでしょうか。よく調べてみると飲酒はかならずしも健康法の一つとは言えないようです。
米国でのレポートでは、アルコールによる発ガンが注目されています。アルコールが原因として疑われるガン患者の割合は男性で10%、女性で3.3%とされています。飲酒による発ガンの原因はアルコールが体内で代謝されてできるアセトアルデヒドと呼ばれる有害物質にあります。
アセトアルデ ヒドは遺伝子に直接作用し発ガンを促進する働きがあります。また細胞内のサビにあたる活性酸素の産生量を増やし、炎症反応を起きやすくすることも発ガンのリスクを増やす要因です。さらにアセトアルデヒドには細胞中のビタミンB6や葉酸など有益な成分を減少させる働きがあるため、これらの作用によっても発ガン率が上昇すると考えられています。 こうした弊害を減らすための最善策はアルコール摂取量を減らすことですが、比較的少量の飲酒でもリスクが高まる場合もあるようです。その理由はアセトアルデヒドを分解する能力には個人差があるためです。
アセトアルデヒド分解酵素の代表であるALDH2を作る遺伝子には、GG型、AG型、AA型の3つのタイプがあります。GG型はアセトアルデヒドを効率よく分解できますが、AG型では分解速度がかなり遅くなり、AA型に至ってはほとんど分解能力がないとされています。AA型の人は下戸と呼ばれる人、つまりお酒が全く飲めない人です。GG型の人は酒豪と呼ばれるお酒に強い人です。中間のAG型の人はビール1杯で顔が赤くなりますが、飲酒の習慣で飲酒量を増やすことができる人です。
AA型の人はお酒が飲めないのでアルコールのリスクそのものがありません。酒豪型遺伝子のGG型の場合には発ガンのリスクよりもアルコール中毒になるリスクに注意が必要です。一方AG型の人は食道や咽頭などのガンの発生率が一番高いようです。AG型ではアルコールから作られたアセトアルデヒドがGG型の人の場合よりも長時間体内に残存することが発ガン率の上昇の原因と言われています。自分のALDH2の遺伝子がどのタイプに属するか、現在では検査にて知ることができます。飲酒の機会が多い方は、自分自身の遺伝子タイプを知っておくことで、アルコール弊害を防ぐことができます。
これからはお酒の美味しい季節となります、適量を知って楽しく飲めば、酒は百薬の長となるはずです。