ビタミンCは人類の歴史で最も早くから注目された栄養素の一つです。15世紀半ばから始まった大航海時代では、船乗りが原因不明の出血に悩まされることが多く、その原因も長い間不明のままでした。ライムなどの柑橘類をとるとこの症状がおこらないということが理解されたのは1920年頃と言われています。
船乗りが悩まされた出血傾向は「壊血病」であり、その症状を治したライムに含まれていた成分は「ビタミンC」であることが知られています。なぜビタミンC不足になると壊血病になるのでしょうか。壊血病とは血管壁にあるコラーゲン繊維の合成が不十分となり出血しやすくなる病気です。ビタミンCはコラーゲン繊維を作るために欠かすことのできない重要な栄養素ですので、これが不足した場合には血管壁がもろくなり出血を起こしやすくなってしまいます。
犬や猫は体内でビタミンCを作り出すことができますが、霊長類である人類はビタミンCを作る酵素を約5000万年以上前に失っています。このため食品からビタミンCを定期的に補給する必要があります。同じ霊長類のゴリラはせっせと木の葉を食べていますが、彼らの食べる木の葉に含まれるビタミンCの総量は体重換算すると人間の成人の場合、約3から4gほどに相当します。
その働きはコラーゲン繊維の合成を助けるほか、活性酸素の除去、肝臓の解毒酵素の活性化、神経伝達物質のノルアドレナリンの合成促進、鉄分やミネラルの吸収促進、免疫能力賦活作用など多岐に渡ります。またビタミンCは眼球内の水晶体や副腎皮質に多く含まれることから、これらの臓器で重要な働きをしていることが推測されています。
がんの治療でもビタミンCは注目されています。ビタミンCを点滴静注すると、その血液中濃度は、経口投与の25倍以上に上昇します。高濃度のビタミンCは組織において代謝されて過酸化水素に変化します。正常細胞には過酸化水素を分解するカタラーゼという酵素がありますが、がん細胞にはこの酵素があまり含まれないため、細胞が破壊されてしまいます。これが高濃度ビタミンCをがんの治療に使用する理由です。
ビタミンCは水溶性ビタミンのため服用後3〜4時間で体外へ排泄されてしまいます。このためできれば朝晩に服用することが理想的です。過剰摂取の副作用には下痢があるため、この性質を利用して便秘の治療目的で服用することもあります。腎臓結石が起きやすくなるという説もありますが、これは事実確認がされていない誤った情報です。
加熱調理によってビタミンCは壊れてしまいますので、新鮮な野菜や果物から補給することが理想です。サプリメントとして摂取する場合には、朝、晩それぞれ1g程度を目安に、体調に合わせて増減させることがおすすめです。疲労を感じる時には就寝前に2〜3gを服用すると翌朝スッキリと目覚めることができます。寒い冬はビタミンC不足になりやすい時期でもあります。積極的な補充で風邪をひかないように過ごしましょう。