生まれた子供は、母乳で育てた方が元気になる。誰しもそう考えると思います。私も、粉ミルクよりも母乳の方が元気な子供に育つと信じていました。なぜなら母乳中には、粉ミルクでは補填できない大切な栄養素が数多くあると教育されてきたからです。
しかし近年の研究では母乳中のビタミンDレベルが極めて低いために、小児の骨形成にとって大きな障害が出ているということです。京都大学の小児科医の依藤先生は、母乳栄養の危険性について2008年に警鐘を鳴らされています。
この研究では、母乳栄養の乳児と人工栄養の乳児の血液中のビタミンD濃度を比較しています。その結果、母乳栄養の乳児は人工栄養の乳児のほぼ半分程度のビタミンD濃度しか血液中に存在していませんでした。ビタミンDが不足すれば、骨形成が障害されて、「くる病」のような疾病が起きるだけでなく、腸管免疫や糖代謝の変化によって全身状態も大きな影響を受けてしまいます。
ビタミンDは、日光浴をするか魚肉を食べることによってしか十分量を補給することはできません。1980年以降、紫外線の弊害が過度に指摘されたせいか、日光を避ける傾向が強くなり皮膚でビタミンDを合成する機会自体が減少してしまいました。また若年女性の魚離れは著しいものがあり、結果として血液中のビタミンD濃度の低下を招いています。
干し椎茸を食べれば良いのではという声も聞かれます。しかし、干し椎茸に含まれるビタミンDはD2と呼ばれる種類で、人間が必要としているビタミンD3とは微妙に異なるものです。D2によって人体のビタミンDを維持することは、欧米では否定的な意見もあるくらいです。
母乳は素晴らしい完全栄養食であるべきです。そのためには母体の栄養状態が整っていないといけません。妊娠可能年齢にある女性には是非ともビタミンDの重要性を理解していただき、積極的に補充をしてほしいと願ってやみません。紫外線も魚も嫌いという方は、サプリメントで結構ですので、ビタミンD3を1日あたり1000~2000 IU 摂取されてください。