そういう時には必ず次のようにお話しています。「象や牛をみてください、草しか食べていないのに強い骨を持っているではないですか。人間との違いは彼らは戸外で日光に当たっていることで、ビタミンDを補給できていることです。ビタミンDがあれば植物中のCaを効率よく吸収し、健康で丈夫な骨を作ることができます」。
安易にカルシウムの錠剤やサプリメントに飛びつく必要はないわけです。むしろ大切なことは、ビタミンDを補充することにあります。
最近の研究では、カルシウムをサプリメントとして摂取することで、大腸ポリープの発症が増えることが報告されています。大腸ポリープは「がん」ではありませんが、将来「がん」になる可能性のある病変です。
本研究は、大腸ポリープのフォローアップ検査を受ける予定の患者(45~75歳)2000名以上を対象としています。 対象者をサプリメントとしてカルシウムを飲む群、ビタミンDを飲む群、両方飲む群、どちらも服用しない群の4つに分けて、その後の大腸内視鏡検査の結果を比較しました。
その結果、3~5年後の内視鏡検査では大きな変化はなかったのですが、6~10年後のフォローアップ検査では、カルシウムを服用した2群で大腸ポリープの発症が増える傾向がみられました。
この傾向は喫煙者と女性で多くみられています。ビタミンDのみを服用している群では、こうした変化はみられませんでした。 カルシウムのサプリメントを服用することのリスクは、近年よく目にする情報です。
本研究もこうした情報の一つですが、前述したように、ビタミンDが十分に足りていればカルシウム不足になる心配は不要です。カルシウムをサプリメントとして服用している方は、その副作用に注意が必要です。