睡眠は、日中働いた脳細胞のゴミを処理するクリーニングタイムです。睡眠中は脳細胞の間隙がわずかに拡張し、覚醒中に処理できなかった老廃物の排泄をスムースにしています。
外来患者様の悩みの中で頻度の多いものは、睡眠障害(不眠症)です。眠れないことの辛さは、脳細胞の老廃物を処理できないことから来ているとも考えられます。老廃物の排泄が滞ってしまうと、アルツハイマー病の原因である、変性したタンパク質が、脳細胞内により溜まりやすくなってしまう可能性があります。
睡眠のもう一つの重要な働きは、成長ホルモンの分泌を促すことです。寝る子は育つといいますが、発育を促す成長ホルモンは睡眠中にしか出ない特殊なホルモンです。成長期を過ぎた年齢では、成長ホルモンは身体の修復をする働きがあります。すなわち寝ている間に、身体は不調の箇所の修復をしているわけです。
良質な睡眠を維持するためにはどうしたらよいのでしょうか。昼間に適度な運動をしていること、日光を浴びることなどは一般的に知られていますが、大量のアルコール摂取や就寝前に甘味を摂ることが睡眠を誘導するメラトニンの分泌を抑制してしまうことはあまり知られていません。良質な睡眠を取るためには、アルコールは少量に抑えることや、就寝前には甘味よりも良質なタンパク質を摂るように心がけましょう。就寝前にブルーライトを浴びると睡眠ホルモンのメラトニンが30%程度減少してしまうことも報告されています。夜間はできるだけ暗い環境にした方が良質な睡眠のためには良いようです。
数日前に開催されたキレーション治療セミナーでは、睡眠学の権威である遠藤拓郎先生の講演がありました。睡眠障害に悩むさまざな患者様のケースの紹介は、説得力に富んだものでした。遠藤先生の睡眠障害治療のポイントは、正確な睡眠計による睡眠パターンの診断から始まることです。重篤な睡眠障害に悩んでいる方は、安易に睡眠導入剤を飲むのではなく、睡眠障害の治療を専門とする医療機関を受診することをお勧めします。