ビオチンは数多くの食品に含まれているため、不足しにくいビタミンと考えられていました。しかし、病態によってはビオチンが不足している状況もあることが知られてきたため、ビタミンB7として改めて注目されています。
妊産婦の50%で不足が起きているという報告もあります。このため周産期には 1日あたり300 μgほどのビオチン摂取が推奨されています。一方特殊なケースですが、生卵を大量に摂取し続けることによってビオチンの不足が起こります。これは白身に含まれるアビシンという成分がビオチンの吸収を阻害することで生じる現象です。しかしそこまで生卵を食べる方はあまり多くいませんので、臨床的には大きな問題にはなりません。時々食べる卵がけご飯くらいではビオチン不足にはなりません。白身が不透明になるまで加熱すればアビシンがビオチンに結合する能力は失われます。
ビオチンは腸内細菌の一種であるラクトバチルスによっても作られるため、腸内細菌叢の乱れからビオチンの供給が低下してしまうと、不足を起こす可能性があります。長期間抗生物質を服用しなくてはいけないような状況や食生活が乱れている場合には、ビオチン欠乏を予防するためにも腸内細菌叢を良好に維持することが必要です。
ビオチンの補充量は多くても1日あたり数mgとわずかな量です。数年前の研究では、100〜300mgという大量を投与することで、難治性神経疾患である多発性硬化症の症状が改善できるという報告があり注目を浴びましたが、症例数が少ないこともあり結論は出ていません。