この研究では、年齢45歳から75歳の乳がんと診断された閉経後女性209名の、血中ビタミンD濃度について調べています。さらに乳がんではないと診断された閉経後女性418名の血液中のビタミンD濃度についても調べ、比較対象としています。
その結果、ビタミンD不足状態とされている血中濃度(20-19 ng/ml )であった女性の割合は、乳がんグループでは55.6%、一方健常者グループでは49.3%と、乳がんグループで有意に高い傾向が見られました。 またビタミンD欠乏状態とされる血中濃度が、20 ng/ml 未満であった女性は、乳がんグループでは26.2%、一方健常者グループでは20.3%と、やはり乳がんグループで有意に高値でした。
さらに対照群の肥満度の割合について調べたところ、乳がんグループでは57.4%、健常者群では40.2%と、乳がんグループには肥満傾向が高いことが認められています。 これらの結果から著者らは、ビタミンD不足と肥満が、乳がん発症に繋がる可能性を指摘しています。
ビタミンD不足と乳がん発症との因果関係ついてはこれまでも数多く議論されてきていますが、結論には至っていません。しかし最近報告された別の研究では、閉経前にビタミンDを十分補給しておくことが乳がん発症予防になる可能性があるとしていますので、若いうちからビタミンDを積極的に補充しておくことは、乳がん予防になると言えそうです。
ビタミンD補充のためには、日光浴をする、鮭などの魚を食べる、栄養サプリメントを服用する、この3つの方法しかありません。現代の日本人のライフスタイルでは、前の二つの条件が満たされることが少ないため、栄養サプリメントを摂取しない限り、確実にビタミンD不足状態に陥ってしまいます。
当院では、健康管理のために、1日あたり2000~5000 IUのビタミンD3を補充することをお勧めしています。