彼の残した大きな業績は、地球の年齢を解き明かしたことだけではありませんでした。地質学的な調査を行う中で、鉛汚染の深刻さに気づき、環境運動に邁進したことは、さらに大きな業績と言えます。大企業や学会からの圧力を受けながらも、鉛を含むガソリン、塗料、「はんだ」など、工業製品の排斥を訴え続けたことにより、多くの人々を鉛汚染から救うことができました。
鉛は加工しやすい金属であり、人類の歴史では様々な形で利用されてきました。ローマ帝国時代のローマには水道施設が普及していましたが、街中の配管には鉛管が使われていました。このため、ローマ市民のほとんどが鉛中毒に罹患していた可能性が指摘されています。
鉛の水道管は、実は現在の日本でも多く使われています。このため築年数の古い建物の場合には、水道管が何でできているのかを確認する必要があります。浄水場から供給される水は、水質検査にて安全性が確認されています。しかし、各家庭の蛇口から出る水の水質検査は行われていませんので、必ずしも安全とは言えません。水道管の材質によっては鉛に汚染されている場合もあります。
鉛汚染の症状には、全身倦怠感、食欲不振、学習能力低下、神経炎、高血圧など様々なものがあります。鉛汚染の可能性がある場合には、早めに専門施設を受診されることをお勧めします。日本キレーション協会に登録されている施設であれば、鉛汚染の診断と治療が可能です。