しかし、この10年余りの間に、「心」の状態や「幸せ」を科学するという発想が医学の世界にも生まれ、様々な研究成果が発表されています。 つい数日前に米国から発表された精神科領域の論文では、人生の目的を捉えている人や探し求めている人では、健康状態が良好である傾向が見られると述べられています。
この研究は、米国のサンディエゴ在住の年齢は20-100歳以上の1042名を対象に、生きる目的を認識している、または探しているかについて調べています。インタビュー形式で認知力についても確認し、生きる目的と健康状態との関係を明らかにしています。
その結果、生きる目的を認識している人では、目的を探している人と比較して、幸福感が多く、健康状態が良好である傾向が見られました。一方、人生の目的を探している人の割合と年齢との関係は、U字カーブ曲線となりました。すなわち、こうした人たちは、青年時代から徐々に減少し、60歳頃最も低くなり、それ以降から増え始めるということです。
多感な青年時代は真剣に生きる意味を探している迷いの時期とも言えますが、社会人となり、家庭を持ち、子育てに追われるようになると、自分自身の存在理由が明確になり、人生の意味を問う時間も無くなるのかもしれません。しかし60歳をすぎると、社会からも徐々に遠ざかり、子供も巣立ち、再び人生に思いを馳せる時間が生まれてくるのだと思います。
この研究成果から言えることは、健康長寿のためには、趣味でも、仕事でも、ボランティアでも、なんでも良いので生きる目的を持つことが必要ということです。
A long life may not be good enough, but a good life is long enough. Benjamin Franklin