COVID-19 — 3つの検査 

COVID-19の波も沈静化する傾向が見られてきました。メディアの影響でしょうか、外来ではCOVID-19検査の問い合わせが増えてきています。本日は、現在行われている3種類の検査についてまとめました(上図)。

PCR検査は言うまでもなく、新型コロナウィルス の遺伝子を確認する検査です。現在ウィルスを排出してるか否かを知るための検査の中では、最も信頼性の高いものです。しかし、PCR検査も100%完全な検査ではありません。感染初期や検体採取の方法が不適切な場合には、ウィルス量が不十分なために、陰性の結果が出ることもあります。こうした検査結果を偽陰性と呼びます。偽陰性とは、本当は感染しているのに、感染していないと診断されることです。

5月中旬に発表された米国ジョンズ・ホプキンズ大学の研究では、COVID-19の偽陰性率の変化を調べています。偽陰性率が最も低下する時期は、感染後8日目(発症後3日目)であり、その値は21%という結果でした(下図)。この研究から言えることは、PCR検査の偽陰性率は20%以下にはならない。すなわち、PCR検査にて陰性という診断が出ても、実際は5人に1人は感染者であるいうことです。感染後の日数によっては、それ以上の確率で感染者が見逃されている可能性があります。

日本では、発熱などの症状が4日以上続いてからPCR検査を受けるようにという厚労省からの指導が出ていました。この告示に対して、なぜすぐに検査をしないのだというクレームもありました。しかし、これはPCR検査の偽陰性率を極力下げる目的であったことが、ご理解していただけると思います。

最も信頼性の高いPCR検査でも、感染状態を100%正確に知ることができないわけですから、抗原検査に至ってはその診断率はさらに下がってしまうことになります。

抗体検査については、その診断価値すら確定していません。人間に感染症を引き起こすコロナウィルスには7種が知られていますが、このうちの4種は一般の風邪症状を起こすコロナウィルス です。抗体検査ではこれらのコロナウィルスに対する抗体を測定している可能性が指摘されており、正確に新型コロナウィルス(SRAS-CoV-2)に対する抗体を調べている保証がありません。このため抗体検査の結果で一喜一憂することは、あまり意味のあることではありません。

Medical Tribune 2020-06-02 より

メディアでは、検査に基づいた証明書を発行して行動の規制、管理をすべきという意見もあるようです。しかし、現状ではCOVID-19感染について安全性を担保、証明できるような正確な検査方法はまだ確立されていません。検査に対する過信をしないことが大切です。

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