PPI 服用とCOVID-19感染

プロトンポンプ阻害薬(PPI)は、胃潰瘍や逆流性食道炎の治療、予防などの目的で広く処方されている医薬品です。読者の方の中にも常用されている方もおられるかもしれません。しかし、「良薬は両刃の劍」と言われるように、PPI服用には、発がん、肝機能障害、骨粗鬆症など、重篤な副作用があることも知られています。

本日ご紹介する論文(7月7日に報告された研究報告(公式発表前))は、PPI服用とCOVID-19感染リスクとの関係について調べています。

この研究は、米国の一般住民を対象にオンライン調査を実施しています。調査期間は、2020年5月3日~6月24日、調査対象は18歳以上の米国在住の男女約5万人。質問事項として、消化器症状と、PPIおよびヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)の使用状況を確認。また、COVID-19検査で陽性だったと答えた人には、診断時における味覚、嗅覚障害の有無、消化器症状(腹痛、下痢、吐き気/嘔吐)、呼吸器、そのほかの症状の有無について確認しています。

調査対象者 53,130名 のうちCOVID-19感染者は3,386名(6.4%)でした。PPI服用患者と服用していない患者について、COVID-19罹患率を比較したところ、罹患リスクは、PPIを1日1回服用の場合に2.2倍、1日2回服用の場合には3.7倍と、明らかにPPI服用患者でCOVID-19感染リスクが高くなっていることがわかりました。一方、H2ブロッカーの場合にはこうした罹患リスクの上昇は見られませんでした。

PPIは胃酸の分泌を劇的に抑制する優れた医薬品です。しかし、胃酸には次のような、生理的に重要な働きが3つあります。

(1) タンパク質の消化吸収
(2)ミネラルの吸収
(3) 病原微生物の除去

今回の報告を見ると、PPIによる胃酸の減少は、ウィルスを除去する能力の低下を引き起こし、COVID-19感染につながったことが推測されます。COVID-19感染予防のためには、安易なPPIの服用は避けた方がよさそうです。

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