マウスウォッシュとCOVID-19

イソジンガーグルを使用することで、新型コロナウィルスを撃退することができるというニュースが、世間を騒がせました。いつものことながら、スーパーからはこの製品があっという間に売れ切れたそうです。

イソジンガーグル液 7%は、1mL中に下記の成分を含有します。

有効成分:ポビドンヨード 70mg (有効ヨウ素として7mg)
添加物: エタノール、l-メントール、サリチル酸メチル、グリセリン、サッカリンナトリウム水和物、
リン酸水素ナトリウム水和物、クエン酸水和物、ユーカリ油、チモール (info.pmda.go.jpより)

イソジンガーグルに含まれるポピドンヨウドには、強い殺菌力があることが知られており、外傷の治療や咽頭炎の予防、治療目的で、医療現場で長く使用されています。しかしこの製品は刺激性が強く、常用すると皮膚や粘膜を損傷する可能性が高くなります。さらに、ポピドンヨードは、ヨウ素を含むため、多用することで、ヨウ素による甲状腺障害を起こすことも稀ではありません。例年の風邪対策として一時的に使用するのであれば問題はありません。しかし、COVID-19 感染のように長期間にわたる予防対策として使用することは、むしろリスクの方が高くなります。

ちょうどこのタイミングで、口腔内洗浄液による新型コロナウィルス除去作用についての研究報告がありました。この研究では、市販の8種類のマウスウォッシュを用いて、使用前後におけるウィルスの除去効果について調べています。その結果は、以下のグラフのように、マウスウォッシュを使用後には、8種類の製品のほとんどで口腔内のウィルス残存量が、有意に低下していました。赤枠内のデータが、ポピドンヨード1%を用いた洗浄前後の比較です。わずか1%溶液ですが、ウィルス除去効果は十分にあるようです。

8つの製品によるウィルス除去作用の比較。赤枠の製品がポピドンヨード 1% 。
https://doi.org/10.1093/infdis/jiaa471
グレーが洗浄剤使用前、白抜きが使用後の残存ウィルス量を表します。

市販のマウスウォッシュの使用でも、ポピドンヨードと同等に、ウィルスの残存量を大幅に減らすことができることがわかります。長期間使用による副作用のことを考えると、刺激性の強いイソジンを使うよりも、市販のマウスウォッシュ の方がより安全かもしれません。

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