亜鉛とマグネシウム

現代人に不足しがちな栄養素として、ビタミンDについて度々述べてきました。しかし、足りないものはビタミンDだけではありません。「亜鉛」と「マグネシウム」も、忘れてはいけない重要な栄養素です。

亜鉛は、免疫力維持に重要な働きをしています。特に70歳以上の高齢者では亜鉛が不足する傾向があります。これが、高齢者における感染症の頻度が上がる原因とも考えられます。あくまでも推測ですが、新型コロナウィルス感染で高齢者の致死率が高いことは、亜鉛欠乏と関係があるかもしれません。

亜鉛が関与している代謝酵素は200種以上とも言われ、DNAやタンパク質の合成、視力や聴力、性ホルモンの分泌、免疫力のコントロールなど様々な働きに関与しています。中でも、粘膜や皮膚の保護のために亜鉛は重要な働きをしています。このため亜鉛不足になると、粘膜の防御機能が衰え病原体が侵入しやすくなってしまいます。また高齢者でよく見られる皮膚の掻痒症(かゆみ)の原因の一つに亜鉛不足が疑われます。

マグネシウムも細胞の活動のためにはなくてはならない重要な栄養素ですが、現代人の食生活では不足しやすいことが指摘されています。マグネシウムは筋肉を弛緩させる働きがありますので、朝起きるときに足をつることがある方では、マグネシウム不足が疑われます。高血圧や不整脈の原因として、マグネシウム不足が潜んでいる場合もあります。残念なことに、加齢や、ストレスがかかるとマグネシウムは細胞外へ漏出してしまいます。こうした状態にある方は積極的に補給が必要です。

亜鉛とマグネシウムのコンビネーションは不眠症の改善に役立つかもしれません。イタリアで行われた臨床試験では、メラトニン 5mg に、亜鉛 11.25 mg とマグネシウム225mgを一緒に服用すると、服用しないグループと比較して睡眠改善効果があったことが報告されています。

我々現代人は便利さを追求するあまり、食生活においてもバランスを大きく崩してしまっています。必要な栄養素が何であるかをしっかりと理解した上で食生活をコントロールしたいものです。

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