本日は、久しぶりに運動系のお話。ストレッチについてです。ストレッチには自分自身で行う能動ストレッチと、自分以外の人に伸ばしてもらう他動または受動ストレッチのふたつがあります。本日の話題は、後者の受動的ストレッチが心臓血管系に対して効果的であるというものです。
動物実験によるストレッチの健康効果については、これまでのいくつかの研究報告がありますが、ヒトを対象にした報告は限られていました。この研究は、39名を対象に受動ストレッチ(PS)群とストレッチをしない(NS)群に分けてその効果を比較検討しています。
PS群は、両側下肢のストレッチ群14名と片側下肢のストレッチ群13名に分類されています。ストレッチをしないNS群は、12名です。ストレッチ群では、週に5回、12週間に渡り下肢のストレッチを行い、血管機能検査として血圧測定の他、Flow mediated dilatation (FMD)とPulse wave velocity (PWV)の測定を行っています。FMDは血管内皮機能、PWVは動脈硬化度を見るための検査です。
その結果は、驚くべきものでした。ストレッチを行ったPS群では、どちらのグループでもFMDやPWVの改善が見られました。一方、ストレッチを行わなかったNS群では、全く変化が見られませんでした。さらに興味ふかいことは、ストレッチの効果は、ストレッチを6週間中断したことによって元に戻ってしまったということです。
自分自身で行うストレッチが効果的であることはよく知られています。しかし自分では何もせずに他の人に伸ばしてもらう、受動ストレッチでも十分に効果が出ていることは注目に値します。
Evidence for improved systemic and local vascular function after long-term passive static stretching training of the musculoskeletal system.
J Physiol. 2020 Sep;598(17):3645-3666.