今年の1月に報告された研究では、ビタミンD濃度が低い高齢者ではCOVID-19による死亡率が高くなる傾向が確認されています。この研究では、65名のCOVID-19患者(平均年齢76歳)を対象にその経過について調べています。
その結果、COVID-19患者では血中ビタミンD濃度が7.9 ng/mLであり、対照群の16.3 ng/mLよりも有意に低い傾向が見られました。さらにビタミンD濃度が低いと血中酸素濃度も低いという相関関係も確認されました。
反対にビタミンD濃度が高いほど、炎症反応の指標であるCRPや血液凝固の指標であるD-dimerの値が下がる傾向も見られています。さらにビタミンD濃度が高いほど胸部CT画像での肺の病変画像が小さい傾向も認められました。
COVID-19にて死亡した患者のビタミンD濃度は、平均で3.0 ng/mLであったのに対して、生存者では8.4 ng/mLと有意に高値だったこともわかりました。
これらのことから、高齢者においては血中ビタミンD濃度が、COVID-19の病態の重症度や生命予後に対して大きな影響を持つことが推測されます。
高齢者では血中ビタミンD濃度が低下するとされています。これは皮膚で作られるビタミンDの絶対量が減少することや、食事量の減少などが原因と考えられています。本研究の対象者でもビタミンD濃度は7.9 ng/mLと日本人平均の24 ng/mLと比較してもかなり低値であることがわかります。
当院外来でも、血中ビタミンD濃度がほとんど測定できないほどに低い方もいます。年齢に関係なく潜在的なビタミンD欠乏の方は想像以上に多いことが懸念されます。
ビタミンD補充のためには、サプリメントを利用することをお勧めします。副作用もなく、比較的安価なサプリメントとして摂取が可能です。成人の場合、1日あたり、2000〜5000 IUを目安に服用されてください。