本日は約1年前に出版された、別冊日経サイエンス「食と健康」(参考文献1)の内容をご紹介します。
表題の「1975年の食卓」は東北大学の都築毅先生が書かれているものですが、
これからの健康管理の上で極めて重要な情報が述べられています。
この研究は、1960年、1975年、1990年、2005年と15年ごとにその年の日本人家庭の1週間分の食生活の内容を再現し、その栄養成分の比較を行っています。
さらにそれぞれの食事内容を凍結乾燥後、8ヶ月間に渡りマウスの餌として与えて変化を観察しています。
栄養成分比較では、下図に示すようにタンパク質と脂質の増加が見られるのに対して、炭水化物の締める割合が減少しています。中でも脂質の増加傾向が顕著であり、2005年の食事では1960年と比較してほぼ3倍にまで増加しています。
マウスを使った実験では、1975年の食事内容には内臓脂肪が増えるのを防ぐ働きがあることが確認されました。さらには糖尿病の原因とも言われるインスリン感受性低下も1975年の食事では最も少ないことがわかりました。その理由を調べたところ、栄養成分が満遍なく含まれていたのが1975年の食事という結論に至っています。
健康増進のための食事内容のポイントは以下のようになります。
- 様々な食材を組み合わせて少しずつ
- 調理法は、煮る、蒸す、生を優先
- 大豆製品や魚介類、野菜、海藻、きのこなど 多彩な食材
- 出汁や発酵系調味料を活用
- 砂糖や塩は控えめ
- 一汁三菜 が基本
1975年といえば、今からほぼ50年前になります。高度経済成長のど真ん中、化学的農法が推奨され、日本の自然がどんどん失われて行った年代でもあります。マクドナルドの日本1号店ができたのが1971年ですので、まさにファーストフードの波が始まった年代です。
1960年代の食事内容では、タンパク質や脂質が少ない傾向が見られます。この頃は生活習慣病よりも低栄養による疾病が多かった時代と言えます。1975年代の食生活が最も優れたものであったとは、飽食の時代に生きる我々にとって、健康食とは何かを深く考えさせられます。