聞き慣れない言葉で恐縮です。エンドカンナビノイドシステム(ECS)とは、我々生命体が生きていく上で欠かすことのできない重要なシステムであることが、1990年代の初頭に明らかにされました。ミミズから我々哺乳類まで、実にさまざまな生命体がその機能を円滑にするために活用しているのがこのECSです。
エンドとは内部のという意味で、カンナビとは大麻草を意味するカナビスから由来しています。ECSは大麻草の薬効成分の研究過程から見つけられた、生命医学の分野では画期的な発見です。その働きは、神経機能の安定化作用のほか全身の多くの細胞機能の調整にあります。すなわち、不安感の軽減、痙攣の抑制、自律神経の安定化など、生命体が生きてゆく上でなくてはならない極めて重要な働きをしているのがECSです。
健康な生命体ではECSを適正に機能させるための物質(エンドカンナビノイド)が分泌されており、神経機能の働きのバランスが調整されています。その結果、ホメオスターシスと呼ばれる体内の恒常性が保たれていることが明らかにされています。例えばランナーズハイという言葉であれば耳にされた方も多いと思います。軽い有酸素運動を行うことによってハイな気分になることを指しますが、そのメカニズムにもECSが働いていることがわかってきました。
一方、重篤なストレスや重症感染症など、生命体にとって過度の負荷がかかると、ECSを機能させるための物質が十分に産生されなくなり、ECSが適正に機能しなくなります。その結果、自律神経機能の不調が生まれ、様々な不定愁訴や疾患が起きることが解明されています。
ECSが機能しなくなった結果生まれる疾患の代表的なものには、下記のようなものがあります。これらは現代医療では診断と治療が困難であるものが多く含まれます。今後の医療では、病気の原因としてECSの不調を考えることが重要になると考えます。次週はECSを適正に機能させるための具体的な方法についてお知らせします。