先週に引き続き、第17回 キレーション治療セミナーの講演内容のダイジェストをお届けします。
本日のテーマは、「亜鉛の基礎と臨床」についてです。
講師の深田俊幸先生(徳島文理大学薬学部 病態分子薬理学研究室 教授)は国際亜鉛生物学会の会長も務めておられる、亜鉛研究の世界のトップランナーです。亜鉛の重要性については、こちらのブログでも度々ご紹介していますが、亜鉛という元素は、健康維持の上では欠かすことのできない重要な栄養素です。しかし、血中亜鉛濃度は加齢に伴い減少してしまうだけでなく、現代人の食生活からは十分な亜鉛の供給が難しいこともわかってきました。
亜鉛という文字から、「鉛」を思い浮かべるために、なんとなく危険な金属のような印象を持つ方も多いようです。亜鉛という名称は江戸時代の「和漢三才図会」に由来するとされ、その当時、亜鉛は鉛のようであるが、よくわからない金属ということで、「亜鉛」という名称で呼ばれるようになったとあります。一方中国では亜鉛のことを、「鋅」と表記します。同じ漢字圏でもその表記が大きく異なっていることは興味深いところです。
亜鉛は、300種類以上の酵素の働きとって重要な存在であるだけでなく、細胞分裂が起きる際には欠かすことのできない栄養素であることが知られています。すなわち、粘膜、皮膚、生殖細胞など、細胞分裂が盛んな臓器や器官では、十分な亜鉛が無いとその機能が維持できないことになります。
亜鉛の1日あたりの必要量は10~15mgとされていますが、多くの日本人がこの摂取量に届いていないと言われています。ちなみに、大ぶりの牡蠣一つあたりに含まれる亜鉛が、ほぼ3mg程度です。自分の体に十分な亜鉛があるか否かを知る方法は、血液検査によって、亜鉛濃度や酵素のALP(アルカリファオスパターゼ)の値を確認するしか方法はありません。下図のように加齢により亜鉛の血中濃度は下がる傾向がありますので、食事やサプリメントによって亜鉛を補充する必要があります。