今年も残すところ半月となりました。このブログも年内はあと2回となりますが、外来でよくあるビタミンDについての質問と回答についてご紹介したいと思います。日本人にはサプリメントで栄養素を補うという発想が馴染まないせいか、ビタミンDを補充する習慣はなかなか受け入れられないようです。2回にわたりQ&A についてまとめますので、ビタミンDをサプリメントで摂取することの参考になれば幸いです。
(1) サプリメントでビタミンDを補充すべき人とは。
現代人は、ほぼ全員がビタミンDを摂取しなくてはいけない状態にあります。日本人の平均血中ビタミンD濃度は、25ng/mL程度であり、至適濃度とされる30 ng/mL に到達していません。一日中戸外で活動しているような人であれば至適濃度に達している可能性があるますが、一般の方の場合には、年代を問わず、ビタミンDをサプリメントで補充する必要があります。
乳児の場合は母体のビタミンD濃度の影響を直接受けてしまいます。母体にビタミンDが不足していれば、当然のことですが乳児のビタミンD濃度も減少してしまいます。調整ミルクにはビタミンDが添加されているので問題がないのですが、母乳のみで育てている乳児の場合には、母親にビタミンD不足があれば、乳児も例外なくビタミンD不足となってしまいます。過去10年で乳児のビタミンD欠乏性くる病が3倍近くに増えているという報告もあり、原因は母体のビタミンD不足が影響していると考えられます。
(2) ビタミンD3、D2、どちらのビタミンDを取るべきか。
サプリメントとして販売されているビタミンDには、D2とD3の2種類があります。人体で作られるビタミンDはD3であり、サプリメントとして摂取すべきビタミンDも当然D3ということになります。ビタミンD2は吸収や効果の点においてD3よりも劣ることが指摘されていますので、出来るだけビタミンD3と表記されている製品を取ることをお勧めします。
(3) どのくらいの量のビタミンD3を接種すべきか。
ビタミンD3の必要量は、個人差が大きいため、どの程度のビタミンDを摂取すべきであるかは、一概には言えません。当院の外来データからすると、血中濃度を30 ng/ml以上を維持するためには、1日あたり1000 IUのビタミンD摂取では、不十分な場合も多いと考えられます。このため成人の場合には、最低でも1000 IU、できれば2000~3000IUのビタミンD3を摂取することが望ましいと考えます。
日照時間の長い夏には少なく、冬には多めを摂取することも理にかなっています。ビタミンD血中濃度は様々な因子によって影響を受けるので、サプリメントによるビタミンD補充を始めてから1~2ヶ月後に、血液検査にて血中濃度を確認することが望ましいです。
ちなみに自分自身は、5000IUのビタミンD3をほぼ毎日摂取しており、血中濃度は 50 ng/ml前後を維持しています。注意点として、肥満者の場合には、より多くのビタミンDを摂取する必要があります。これは摂取したビタミンDが脂溶性のため、脂肪組織内に溶け込んでしまうため、十分な血中濃度を維持できなくなるから起きる現象です。また肝機能障害がある場合にも至適血中濃度を維持するためには、人よりも多くのビタミンDを取る必要があります。肝機能障害がある場合には、ビタミンDが肝臓で代謝を受けて血中濃度の指標である25(OH)Dに変化する割合が減少するためです。普段、日に当たる時間が短く、魚料理も滅多に食べない人では、サプリメントによるビタミンD3の必要量も増えることになります。(ビタミンDの容量を示す単位には「μg 」と「IU」の2種類があり、1μg = 40 IU で換算されます。例えば、25 μgは、1000 IU 相当となります。)