イベルメクチンは、疥癬の治療薬として認められている駆虫剤の一種です。医薬品としての歴史は古く1987年にまで遡ります。その開発にあたって多大な貢献をされた大村智先生は、2015年ノーベル生理学医学賞を授与されました。
COVID-19によるパンデミックが始まると、イベルメクチンが予防や治療の上で有効ではないかということが議論されるようになり、インドやブラジルなどの諸外国でも、イベルメクチンをCOVID-19の予防や治療目的で積極的に使用するようになりました。日本でも東京都医師会や北里研究所などが中心となりその効能を訴えていますが、人間を使った臨床データが不足しているという理由で、日本国政府は、イベルメクチンをCOVID-19に対する治療薬、予防薬としては認めていません。
こうした背景の中、イベルメクチンのCOVID-19感染予防効果に関する本格的な臨床研究の結果が、10日ほど前にブラジルから発表されました。対象被験者数は約16万人という膨大な数になります。その結果は上図のように、感染率、入院率、死亡率、どれをとってもイベルメクチンを服用することで、大幅に低下していることが確認されました。この論文は正規の科学論文であり、査読というチェックも受けているものですので信頼できる内容です。
この臨床試験は、2020年7月から12月にかけて、ブラジルは、サンタカタリーナ州の港湾都市であるイタジャイ(Itajaí)市で実施されました。全市民の約70%にあたる159,561名が、臨床試験に参加しています。このうちの71.3%にあたる113,845名がイベルメクチンを服用し、23.3%にあたる45,716名がイベルメクチン非服用者として臨床試験に参加しています。イベルメクチン服用者は、予防目的でイベルメクチン 0.2mg / kg /日を、15日ごとに2日間連続して服用しました。
その結果、イベルメクチンを服用したグループでは、COVID-19感染者は4197名、感染率は3.7%であったのに対して、非服用群では、3034名が感染し、その感染率は6.6%であり、感染率が44%減少したことが確認されました。3,034名のCOVID-19感染者について調べたところ、服用群では44名(1.4%)が入院したのに対して、非服用群では99名(3.3%)が入院していました。入院率についてみると56%の減少ということになります。死亡者はイベルメクチン服用群では25名(0.8%)であったのに対して、非服用群では79名(2.6%)でした。イベルメクチンを服用したことにより死亡率が68%低下したことになります。
COVID-19感染に対する予防や治療の目的で、イベルメクチンを服用することについては、これまでも多くの議論がありました。しかしインドやブラジルなどの感染抑止の効果を見る限り、イベルメクチンを予防的に使用することの臨床的効果はあると考えても不思議ではありません。今回公表された論文は、イベルメクチンの臨床的予防効果を実証したものと言えそうです。
Ivermectin Prophylaxis Used for COVID-19:
A Citywide, Prospective, Observational Study of 223,128 Subjects Using Propensity Score Matching
Cureus. 2022 Jan 15;14(1):e21272.
doi: 10.7759/cureus.21272.