恩師の熊本悦明先生がご逝去されました。享年92歳。お亡くなりになる直前までお元気に外来をされておられたということです。まさに大往生であったと思います。熊本先生は東大医学部卒業後、札幌医科大学の泌尿器科教授として札幌に赴任され、男性ホルモン補充療法の草分け的な存在として活躍をされた先生でした。
私が北海道大学医学部の学生時代、熊本先生は札幌医科大学の泌尿器科教授として、北海道大学にご講演にいらっしゃいました。その後30年経って、抗加齢医学会にて再びお会いした時は、昔のままのお元気なお姿に大変驚いたことを覚えています。
母体内の男性ホルモンレベルが上昇すると胎児の性別が男性になるとされています。この現象を男性ホルモンシャワーと呼ぶこと、母体に大きなストレスがかかると、男性ホルモンが十分に出ないために胎児の男性化にとって障害となり、こうした胎児が性同一障害のような状態になりやすいことなど。男性ホルモンに関連する様々なことを教えていただきました。
当院にもお越し頂き、筋肉量の検査をさせていただいたことがありました。80代半ばの年齢で、アスリート並みに筋肉が温存されており、驚いたことも懐かしい思い出です。もちろんこれは熊本先生ご自身が実践されておられた、男性ホルモン補充のなせる技であったわけです。
お世話になった恩師との別れは、言葉にならないほど寂しいものです。しかし、熊本先生が残してくださった明るく楽しい思い出は、まさに先生のお名前のように、これからも自分の中で生き続けると思います。熊本先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。