生活習慣病の一つとも言える脂肪肝は、肝臓がんへと進行する危険な疾患です。近年、脂肪肝から発症する肝臓がん患者が急増していることも報告されており、警鐘が鳴らされています。飲酒の習慣がなくても、内臓脂肪の増加や加齢による変化で脂肪肝になるとされており、これを予防することは、健康管理の上で極めて重要です。
動物実験では、魚脂に含まれるオメガ3脂肪酸、EPAやDHAが、脂肪肝やこれに伴う肝細胞がんを予防するとされていますが、人間の場合にどうなるのかは、明らかではありませんでした。しかし、昨年の暮れに発表された研究では、魚脂をサプリメントとして摂取している人では、肝臓がんや肝内胆管がんの発生率が大幅に減少していることが確認されました。
この研究は、約43万人の中高年の男女の健康情報を調べたUK Biobanak*(2006-2010)のデータを解析しています。約8年間のフォローアップ期間中に、262名の肝臓がん患者が確認されています。このうち127名が肝細胞がん、110名が肝内胆管がんでした。(* UK Biobank:英国の大規模疫学研究)
統計解析の結果、魚脂を摂取する習慣のある人では、肝細胞がんになるリスクが48%に減少、肝内胆管がんになるリスクは60%に減少していました。さらに魚脂をより多く摂取する人では、肝細胞がんのリスクが46%にまで減少していましたが、肝内胆管がんのリスクには変化はありませんでした。
魚脂に含まれるオメガ3脂肪酸には、抗炎症作用があることが知られており、血小板の凝集を抑制する効果から医薬品としても活用されるようになっています。さらにEPA,DHAを2〜3gほど摂取することは、降圧効果も期待できるという研究報告もあります。このようにオメガ3脂肪酸には、心臓病や高血圧など循環器系疾患に効用があることは広く知られています。
今回の研究の価値あるところは、オメガ3脂肪酸には、循環器系疾患以外の肝臓がんに対しても予防効果あることが明らかにされたことです。近年の日本人の魚肉摂取量は減少傾向にあるようですが、海の幸に恵まれた環境にあることを再認識して、魚肉摂取量を増やすべきだと考えます。時流のSDGsの観点からすると、イワシ、アジ、サバなど、近海物の青魚を中心に食べることが望ましい事になります。