観測史上初めてという6月の猛暑日が続いています。夏至を過ぎたばかりのこの時期の太陽光線には、紫外線量が最も多く含まれており、日焼けを嫌う方にとっては大敵とも言えますが、一方では、短時間でビタミンDを増やしてくれるありがたいものでもあります。
1980年初頭から、紫外線と皮膚ガンのリスクについて警鐘が鳴らされるようになり、それ以降多くの人々が紫外線を避けるような生活をするようになってしまいました。その結果、現代人にはビタミンD欠乏という、自然界の動物には見られない特殊な状態が生まれてしまっています。
ビタミンD欠乏による弊害には様々なものがありますが、最近の研究では、認知症との関係についての報告がありました。この研究では、約30万人のデータ(UK Biobank)を解析したところ、以下のことが指摘されています。
1. ビタミンDが低いと脳の萎縮が起きやすく、認知症や脳血管障害の原因となる。
2. 遺伝子解析の結果でも、ビタミンD欠乏と認知症との関係が指摘されている。
3. ビタミンDを 20 mg/dL以上に増やせば、認知症患者の17%を予防できる可能性がある。
なぜビタミンD欠乏によって認知症になるリスクが増えるのか、そのメカニズムは未だ解明されていません。しかし、全身の細胞に機能するホルモンの一種であるビタミンDが欠乏することは、カルシウム代謝だけでなく、全身の炎症を抑制する働きや組織の解毒機能など、認知症の予防にとっても重要な働きをしていることが考えられます。
暑い夏ですが、朝晩の涼しい時間だけでも外出の時間を作り、太陽光線を浴びることは、健康増進の上で極めて有益と考えます。