飲酒の効用

「酒は百薬の長、過ぎたるは毒」
適量がどこにあるのか、人それぞれで異なるため判断が難しいところです。しかし、適量の飲酒によってメンタルストレスを解消することは、心臓血管疾患の予防につながることが最新の研究で明らかにされています。

この研究は、ハーバード大学の関連病院である、マサチューセッツ総合病院の研究者らによって行われました。研究者らは、軽度から中等度のアルコール摂取が、脳内のストレスシグナルの長期的な減少に関連していることを初めて明らかにしました。その結果、適量な飲酒の習慣がある対象者では、心臓血管疾患の発症が有意に低下する傾向が見られたということです。軽度から中等度の飲酒とは、だいだいですが、1~2合程度の飲酒量になります。

対象は、ハーバード大学関連病院に疫学調査のために登録されている約5.3万人。年齢の中央値は60歳、6割が女性です。このうちの約45%にあたる2.4万人は飲酒の習慣がありませんでした。平均3.4年間のフォローアップ期間中に、1914名(3.6%)が心臓血管疾患に罹患しました。飲酒の習慣と心臓血管疾患の発症との関係について調べると、適量の飲酒の習慣がある人では、心臓血管疾患に罹患するリスクが、約21%減少していたということです。

さらに脳のPET検査を受けた713名について見てみると、SNA(Stress-related neural network activity)が適量飲酒の習慣がある群で有意に減少していました。これは適量飲酒であれば、精神的ストレスを軽減できる可能性を示唆しています。これらのことから、著者らは、適量飲酒により精神的ストレスが減少し、心臓血管疾患の発症が抑制されたのではないかと結論づけています。(下図参照)

適量飲酒がSNAを減少させている。1 drink とは、おおよそ1合。

酒が百薬の長であることを実証したかのような、実に興味深い研究結果です。しかし、上のグラフにもあるように、適量飲酒量を超えるとSNAが増加することも確認されています。また、多量の飲酒はさまざまな「がん」の発症を促すことも指摘されています。健康増進のためには、あくまでも適量の飲酒であることをお忘れなきよう。ちなみに私自身は、適量の飲酒は2合程度までと決めています。

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