お梅雨も半ば、熟した梅の実を目にする季節となりました。青梅の実には、アミグダリンと呼ばれる毒素が含まれるため、生食はできませんが、梅干しや梅肉エキスのように加工することによって安全に食することができるだけでなく、さまざまな健康効果があることが知られています。
最新の研究では、梅肉エキスには高血圧の予防効果があり、心臓血管疾患の予防につながる可能性が指摘されています。この研究は、米国テンプル大学ルイス・カッツ医学部心臓血管研究センターの教授である江口博士らによって行われた基礎研究です。
高血圧症の原因の一つに、アンジオテンシンII（Ang2）という物質が血管の平滑筋に働くことが知られています。著者らはAng2をマウスに注射し、人工的な高血圧モデルを作り、梅肉エキスを飲用した群としない群での違いについて検討しています。
その結果、梅肉エキスを飲用した群では、高血圧を合併しなかっただけでなく、高血圧の特徴的合併症である大動脈壁中膜の肥厚が抑制されていることが確認されました。さらに心臓エコー検査では、梅肉エキスによって心臓の肥大傾向が軽減されていることもわかりました。
さらに詳細な細胞内エネルギー代謝について検討を加えたところ、梅肉エキスを飲用したマウスでは、高血圧症マウスに特徴的な細胞代謝が阻害されていたことがわかりました。これらのことから、梅肉エキスには高血圧、また高血圧に合併する血管障害を予防する働きがあることが推測できます。
江戸時代から始まったとされる梅肉エキスの歴史ですが、古の日本人は自然界の恵みから健康を維持するためのさまざまな方法を創出していたのだと思います。梅肉エキスが苦くて抵抗がある方は、梅干しや梅酒でも良いので、梅の持つ健康増進効果を活用されることをお勧めします。
