肺気腫などの慢性肺疾患に対する効果的な治療は、残念ながらまだ確立されていません。このため、こうした肺疾患にならないように予防することが最善策となります。しかし慢性肺疾患予防に効果的な食事内容についての研究は、これまでほとんどされていませんでした。こうした背景の中、最新の研究は、オメガ-3脂肪酸が肺の健康を維持するために重要な働きをするかもしれないという、新たな発見をしています。
この研究は2つの異なる内容から構成されています。一つは、約15,000人を対象とした研究で、平均7年間の調査期間を設けて対象者の食事内容と呼吸機能との関係について調べています。対象者は、研究が始まった時点では慢性肺疾患に罹患していない健康人であり、平均年齢は56歳、55%が女性、人種的に多様な成人のグループでした。調査の結果、血中オメガ-3脂肪酸濃度が高いほど、呼吸機能が維持されることがわかりました。特にDHA(ドコサヘキサエン酸)濃度が高いほどこの傾向が強いことが認められています。
もう一つの研究は、50万人以上の遺伝子データを分析し、肺の健康と相関するかどうかを見るために、血液中の特定の遺伝子マーカーを、栄養摂取量の間接的な測定値として解析しています。その結果、オメガ-3脂肪酸、中でもDHAが高いほど肺機能の改善と関連していることが示されました。
がんや心血管疾患を予防するための食事の役割については多く知られていますが、慢性肺疾患における食事の役割はあまり研究されていませんでした。この研究は、魚の脂肪に多く含まれるオメガ-3脂肪酸を摂取することが、肺の健康を維持できる可能性を示唆したものです。若い世代を中心に魚を食べる機会が減ってきているようですが、肉より魚を食べた方が健康管理の上では効果が大きいと言えそうです。