DHAと聴力

加齢に伴う聴力障害は悩ましい問題ですが、オメガ3脂肪酸の一種であるDHA(ドコサヘキサエン酸)にはこうした聴力障害を予防する働きがあるかもしれません。

米国栄養学会の年次総会であるNUTRITION 2023で発表された研究内容によれば、オメガ3脂肪酸であるDHAの血漿中濃度が高いほど、中高年の難聴リスクが低い傾向が認められています。この研究は、2007年から2010年にかけて、40歳から69歳までの男女を対象として行われた健康調査であるUKバイオバンクの参加者のデータを解析しています。

この研究で使用した、質問項目と回答した人数は以下のようでした。

  • 聴力障害の有無……….115,303人
  • 周囲の雑音があると会話についていけないかどうか……..113,134人
  • 補聴器の使用の有無 ……….71,368人

解析の結果、血漿中のDHAが上位20%の人は、下位20%の人に比べ、聴覚障害を訴えるリスクが8%から20%低かったこと。さらに血中DHA濃度が上位20%の人は、DHA濃度が下位20%の人に比べて、「聞こえにくいですか」という質問に「はい」と答える確率が16%低かったことがわかりました。

DHA濃度が高いほど、心臓病、認知障害、死亡のリスクが低いことは、過去の研究でも報告されています。今回の研究は、これらの知見をさらに発展させ、聴覚機能を維持し、加齢性難聴のリスクを軽減する上でDHAが果たす役割を示唆するものであると、担当研究者は述べています。

オメガ3系脂肪酸は、内耳の細胞の健康を守ったり、大きな音や化学物質、感染症に対する炎症反応を和らげたりする働きがあるかもしれません。高齢者や動物を対象に行われたこれまでの研究でも、オメガ3系の摂取量が多いほど、加齢に伴う難聴と逆相関になり、難聴を予防できる可能性が示唆されています。

私たちの体内でDHAを生成する能力は限られているため、血液中や組織中に含まれるDHAの量は、オメガ3の摂取量に大きく左右されます。DHA濃度は、魚介類を定期的に摂取したり、サプリメントを摂取することで高めることができます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次