5-ALA(アミノレブリン酸)は、人体内で作られるアミノ酸の一種です。アミノ酸と言ってもタンパク質を作る性質は持たず、細胞内で代謝されてヘモグロビンなどの原料となるヘムとなります。このヘムには、細胞のエネルギー源となるATP産生や細胞の抗酸化作用など重要な働きもあり、5-ALAを増やすことは細胞の機能を維持する上で大きな意味があります。
しかし、加齢に伴い細胞内で5-ALAを作る力は衰えてしまうため、5-ALAをサプリメントの形で補給することが、健康長寿のためには有効と考えられています。5-ALAの医学応用は50年ほど前から注目されていましたが、極めて高額な物質であったこともあり、一般的な臨床研究が進んでいませんでした。しかし日本人によって大量生産技術が開発され、近年では広く利用されるようになっています。
人間を対象とした比較試験では、5-ALAを1日あたり15mg服用し3ヶ月後の血糖値を調べたところ、5-ALAを服用した群では、糖質代謝改善作用があったことが確認されています。こうした背景から、市場には血糖値コントロール用のサプリメントとして5-ALA含有の製品が多く出回るようになっています。
基礎研究では、5-ALAには高齢者で起こる筋肉量減少(サルコペニア)を抑制する効果があることが報告されています。昨年発表された人を対象とした臨床研究では、握力の減少を予防する働きがあることが報告されています。他の研究では、5-ALAががん細胞の代謝を阻害する働きがあることが解明されており、がん予防や治療の目的で5-ALAを使用することが注目されています。
もともと人体の細胞が作り出す成分であり、大量に摂取しても顕著な副作用は見られない、安全な物質です。日本発の健康栄養素としての5-ALAの研究が進むことを期待します。