新緑の季節となり、戸外での運動時間も増やしやすい陽気となりました。適度な運動は、健康な高齢者だけでなく、軽度の認知機能低下を持つ人々にとっても、認知機能の改善効果があることが最新の研究で明らかにされています。
この研究は、運動不足だった33人の高齢者を2つのグループに分けて、1つのグループには、12週間にわたって週に4回、30分間の早歩きをしてもらい、もう1つのグループには、運動不足である習慣を継続してもらいました。33人の高齢者(平均年齢78.0歳)の内訳は、17人の健常認知機能を維持している者と16人の軽度の認知障害(MCI)患者です。
12週間後、認知機能テストを行った結果、運動グループの人では、軽度の認知障害を持つか否かに関係なく、運動をほとんどしないグループよりもテストで良い成績をおさめていました。参加者の受けたテストは、運動テスト、制御口頭単語連想テスト(COWAT)、レイ聴覚言語学習テスト(RAVLT)、物語性記憶テスト(論理記憶;LM)、そして休息状態のfMRI:機能的磁気共鳴画像法(Functional Magnetic Resonance Imaging)でした。
脳のfMRIスキャン画像では、運動グループにおいて、脳神経細胞間のネットワーク接続性が強化されたことも明らかにしました。研究者は、神経接続の増加が、健康な成人と認知機能が低下した人々の両方での記憶パフォーマンスの改善を説明できると説明しています。
本研究の対象患者数は30名余りで少数ではありますが、それでもこれだけの違いが認められたことは、驚きに値します。身体機能と脳細胞との間には密接な関係があります。できる範囲からでも良いので、体を動かす習慣をこの時期に始めたいものです。