タウリンとうつ病

海馬(かいば、英: hippocampus)は、大脳の一部である大脳辺縁系(だいのうへんえんけい、limbic system)に属しており、解剖学的には、側頭葉の内側に位置し、左右の大脳半球に一つずつ存在します。海馬の働きは新しい記憶の形成や既存の記憶の整理に関与し、ナビゲーションや空間記憶にも深く関与しています。認知症患者の画像診断で海馬の萎縮の有無が確認されることは広く知られています。

最近の研究では、女性のうつ病患者について調べたところ、海馬に含まれるアミノ酸の一種である「タウリン」の濃度が低下していることがわかりました。この研究には、18〜29歳の薬物治療を受けていない41人の女性(うつ病の診断を受けている)と、健康な43人の対照群について、磁気共鳴装置を用いてタウリン濃度を測定しています。

その結果、若い女性のうつ病患者の海馬内のタウリン濃度は、健康な対照群の若い女性に比べて19%ほど低いことがわかりました。(うつ病患者:0.91±0.06、健常者:1.13±0.06 mM。)

うつ病は、気分の低下、興味や喜びの喪失を特徴とします。原因は不明ですが、一般的に女性は男性よりも2倍うつ病になりやすいことが知られています。タウリンは、アミノ酸の一種で、神経細胞の分化、樹状突起形成、シナプス接続の形成に重要な役割を果たしています。特に、海馬における神経細胞の増殖と神経細胞同士の連絡網であるシナプトジェネシスを強化します。

動物実験では、タウリンは抗うつ効果を有することが知られていますが、人間のうつ病患者におけるタウリンの病態生理についてはあまり知られていませんでした。今回の研究は、うつ病患者へのタウリン投与の可能性を示唆するものと言えそうです。

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