コエンザイムQ10(CoQ10)は、脂溶性の抗酸化サプリメントとして知られていますが、我が国では、40年以上前から心臓病治療薬として利用されています。最新の臨床試験でも、心臓発作からの回復期において、標準治療に加えてCoQ10を併用することが、より効果的であることが示されました。
この研究は、冠状動脈の狭窄によりステント設置を行い、抗血小板療法とスタチン治療を受けている120人の心臓疾患患者を対象としています。スタチンは、肝臓に働きコレステロールを低下させると同時にCoQ10の合成を抑制します。このため対象のうち61人は1日30mgのCoQ10を摂取しています。これは一般的なサプリメントの摂取量(100~300 mg/day) よりも低い量です。
その結果、1か月および3か月後のフォローアップ検査で、CoQ10を摂取した参加者は、対照群と比較して左心室の駆出率(心不全では低下する指標)が大幅に改善しました。さらに、3か月後にはB型ナトリウム利尿ペプチド(心不全では上昇する指標)の減少も、CoQ10を摂取した群で顕著でした。これらの結果から、CoQ10が心機能の早期回復を助けることが明らかにされました。
また、CoQ10の作用メカニズムを調べた結果、CoQ10を摂取した対象では、炎症反応の低下が認められました。並行して行われたマウスの研究でも、CoQ10を摂取したマウスの心臓では、炎症反応が少ないことが確認されました。これらの現象は、心臓発作からの回復期において、CoQ10の補充が炎症反応を抑制する可能性を示しています。
CoQ10は、細胞のエネルギーであるATP生成に不可欠な補酵素で、主な働きはミトコンドリアでATPの生成を助けることです。このためCoQ10は、心臓や筋肉など高エネルギーを必要とする臓器で重要な役割を果たします。また、強力な抗酸化物質として細胞膜やミトコンドリアを酸化ストレスから保護し、老化や病気の進行を遅らせる効果もあります。さらに、免疫系をサポートし、炎症を抑えることで心血管疾患や神経変性疾患のリスクを減少させることも知られています。
加齢に伴い体内のCoQ10濃度は減少し、細胞内のエネルギー不足が起きる結果、健康状態の低下につながります。CoQ10は魚肉などの食品から摂取できるほか、サプリメントとしても補充が可能です。体力減退を感じている方は積極的に補充されることをお勧めします。