加齢黄斑変性症 (AMD: Age-related Macular Degeneration)はその治療が難しい眼科疾患の一つです。眼球へ薬液を注射することが代表的な治療ですが、リスクやコストの問題もあります。こうした背景があり、最新の研究では抗酸化作用のある栄養に加齢黄斑変性症の進行を遅らせることができるか調べています。
この研究では、加齢眼疾患研究(AREDS)とその後継であるAREDS2の二つの抗酸化物質群の効果について評価しています。AREDSはビタミンC、ビタミンE、β-カロテン、亜鉛を含み、AREDS2はこれに加えてルテイン/ゼアキサンチンやオメガ3脂肪酸(ドコサヘキサエン酸とエイコサペンタエン酸)を含んでいます。
その結果、AREDS使用群では、対照群と比較して病変部の中心黄斑への進行速度を有意に遅らせることが示されました。具体的には、抗酸化剤を摂取した群の進行速度は50.7 μm/年であり、摂取しない群の72.9 μm/年よりも遅いことが確認されました。
一方、AREDS2の研究でも、ルテイン/ゼアキサンチンを含む抗酸化剤が、中心黄斑への進行を有意に遅らせることが示されました。ルテイン/ゼアキサンチンを摂取した群の進行速度は80.1 μm/年であり、摂取しない群の114.4 μm/年よりも遅いことがわかりました。これにより、ルテイン/ゼアキサンチンが病変の進行を遅らせる効果が確認されました。
AREDS2では、一部の参加者に対してβ-カロテンを排除した抗酸化剤が用いられました。これは、β-カロテンが喫煙者において肺がんリスクを増加させる可能性があるためです。結果としては、β-カロテンなしの製剤でも効果が確認されていました。
AREDS2は、より広範な抗酸化成分を含むことや、β-カロテンのリスクを排除できることから、総合的に見て効果的であるといえます。特に、ルテイン/ゼアキサンチンを含む抗酸化剤が加齢黄斑変性症の進行を遅らせる点で、AREDS2が優れていることが示されました。加齢黄斑変性症の進行を遅らせるために抗酸化栄養素を含んだサプリメントを摂取することは有益と考えます。