魚肉摂取と水銀汚染

魚を食べることのメリットは、陸上から得られる食品には含まれない栄養素、中でもオメガ3脂肪酸やセレニウムなどのミネラル類を摂取できることです。一方、近年の海洋汚染の影響で、残念なことですが、魚介類摂取のデメリットについても考える必要が生まれています。

ハーバード大学の関連施設から最近発表された論文は、まさにこのメリットとデメリットについて述べています。この研究の目的は、水銀の有害な影響を最小限に抑えながら、魚に含まれる栄養素の健康上の利益を最大化するための方法を見つけることです。

この研究は、マサチューセッツ州のNew Bedford地域のコホート研究に参加した母親とその子供788人を対象に、魚の消費量と子供の神経発達の程度との関係について調べています。魚の消費量については、摂取した魚を水銀含有量によって、低・中・高に分けて、その影響を分析したことが本研究の特徴です。

研究結果によると、妊娠中に水銀含有量が比較的少ない魚を多く摂取した母親の子供は、神経発達において有益な影響が見られました。一方、水銀含有量が高い魚を多く摂取した母親の子供には、神経発達に有害な影響が確認されました。これらことから、魚の摂取量を単に減らすのではなく、どの種類の魚を摂取するかを慎重に選ぶことが重要であると結論づけています。

水銀汚染の原因は、火山活動などの自然現象によっても生じますが、最も大きなものは、化石燃料の焼却や鉱石の採掘など人為的なものです。このため現在の水銀汚染レベルは、自然現象によるものだけの場合と比較して7倍ほどになっているという研究報告もあります。大気中に放出された水銀は、海中の微生物からプランクトン、小魚から大魚へと食物連鎖によって濃縮されてゆきます。

水銀の持つ有害な作用は神経障害です。我が国は水俣病を経験しており、世界の中でも水銀に対して最も注意深くあっても良さそうなものですが、皮肉にも現実はそうでもなさそうです。

日本人の毛髪からは、米国人の平均値の4〜5倍高濃度の水銀が検出されています。この原因は魚、特に大型の魚に含まれる水銀の影響が考えられます。水銀が高濃度に含まれる魚には、当然のことですがマイクロプラスチック類の汚染も同時に起きていることを考えなくてはいけません。厚労省は妊産婦が大型魚を食べることことのリスクについて、指針を出していますが、広く認知されていないことも事実です。

未来ある子供達の健康を守るためにも、頻回に食べて良い魚と、そうでない魚の見極めが必要になっている時代だと思います。

参考資料 

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