イリノイ大学の研究によると、ヒ素やその他の有害金属への暴露が糖尿病の進行を加速させる可能性があることが明らかにされました。
この研究は、テキサス州南部に住む500人以上のメキシコ系アメリカ人を対象に、尿中の有害金属と糖尿病との関係について調べています。参加者は尿と血液サンプルを提供し、尿中の金属濃度を測定した後、3年間にわたり血糖値の変化を追跡しました。
その結果、尿中の有害金属が高濃度である場合には、血糖値の急速な上昇と関連していることがわかりました。特に尿中のヒ素濃度が最も高い人々は、最も低い人々に比べて、前糖尿病状態になることが、通常の場合よりも23ヶ月早く、糖尿病になる時期も、65ヶ月ほど早いことがわかりました。
この研究は『Diabetes Care』誌に掲載されており、糖尿病のリスク要因としてこれまであまり注目されてこなかった環境要因に焦点を当てています。研究者たちは、汚染された食品や水、その他の製品への暴露を減らすことで、このリスクを軽減できると強調しています。
また、この研究は、テキサス州スター郡の住民を対象としたもので、地域の地下水にはヒ素やその他の有害金属が検出されており、食事や薬を通じても摂取される可能性があると指摘されています。その結果、尿中のヒ素やその他の金属濃度が高い人々では、血糖値の上昇速度が速いことが確認されました。
研究者たちは、環境要因は遺伝子とは異なり修正可能であり、糖尿病予防のための新たな手段として、環境政策の活用が有効であると結論づけています。
ヒ素、鉛、水銀、カドミウムは、現代人にとって暴露される可能性が最も高いとされる金属です。中でもヒ素は汚染された土壌や、農薬類に含まれることから、食品や飲料水を経て人体へ蓄積する可能性があります。当院外来でも稀ではありますが、ヒ素が検出されるケースがあります。難しいことではありますが、できるだけ安全な食品を食材として選びたいものです。