健康的な食事が低リスクの前立腺がんの進行を抑える可能性があることが報告されています。この研究は、米国で行われたものですが、2005年から2017年の間にグレード1前立腺がんと診断され、アクティブ・サーベイランス(積極的経過観察)を受けている886人の男性(中央値年齢66歳)を対象に実施されました。アクティブ・サーベイランスとは、低リスクのがん患者が進行の兆候を定期的にモニタリングし、必要に応じて治療を検討する手法です。研究では、患者の食事情報をもとに「健康的な食事指数(HEI)」を算出し、食事の質とがんの進行リスクとの関係を評価しました。
HEIスコア(Healthy Eating Index)とは、食事の健康度を数値で示す指標で、どれだけバランスの取れた食生活をしているかを評価するものです。スコアは0から100点の範囲で、点数が高いほど健康的な食事とされます。
具体的な内容は以下のとおりです:
- 果物と野菜の量 – どれだけ多くの果物や野菜を食べているか。
- 全粒穀物 – 白米や白パンよりも、玄米や全粒パンなどを選んでいるか。
- 健康的なたんぱく質 – 魚や豆類、ナッツなどの良質なたんぱく質を多く摂っているか。
- ナトリウム(塩分)の量 – 食べ物の塩分が少ないかどうか。
- 飽和脂肪酸や添加糖の制限 – バターやお菓子など、体に負担をかける成分を控えているか。
このように、「何を多く食べているか」だけでなく、「何を少なくしているか」も含めて評価するため、より包括的に食事の質を見ます。たとえば、果物や野菜を多く食べ、ジャンクフードを控える食事は、HEIスコアが高くなります。
結果として、HEIスコアが高いほど、より悪性の状態に進行することのリスクが低いことが分かりました。特に、HEIスコアが12.5ポイント上がるごとに、グレード2以上への再分類リスクが約15%減少し、グレード3以上への再分類リスクが約30%減少することが明らかになりました。さらに、食事の炎症誘発指数(DII)を用いた評価では、炎症が前立腺がんの進行に寄与する可能性が示唆されましたが、低グレードから高グレードへの進行に関する影響は確認されませんでした。
前立腺がんは、高齢男性を待ち構える最後の砦とも言われています。今回の研究は前立腺がんの診断を受けた方にとっての有意義な指針となると思います。