米国軍隊の基本訓練では、栄養不足の訓練生は外傷リスクが高いとされています。これに対処するため、女性志願者に対してマルチビタミン(MVM)*の摂取が推奨されていますが、遵守率が低く、MVMの効果が最大限に発揮されていない可能性が指摘されていました。このため、摂取率をどのように改善するかが課題となっています。
本研究では、MVMの摂取遵守率に教育方法がどのような影響を与えるかを評価しました。対象は女性訓練生159名で、MVMに関する教育方法を「ビデオのみの教育群(80名)」と「ビデオ+専門家による対面教育を受けた教育群(79名)」に分け、教育効果、遵守率、および外傷率の違いを比較しました。
その結果、対面教育を受けた群はビデオのみの群に比べて有意に高い服用遵守率を示しました。また、対面教育を受けたグループでは、17%の志願者が筋骨格系の損傷を、5.0%が骨ストレス損傷を受けました。一方、ビデオのみを視聴した参加者では、31%が筋骨格系の損傷を、15%が骨ストレス損傷を受けました。対面教育を受けた群では、筋骨格系の外傷発生率が43%、骨ストレス損傷の発生率が66%低く抑えられるという結果が得られ、対面教育がリスク低減効果において優れていることが示されました。これにより、専門家との対面教育がビデオ視聴のみよりもMVMの遵守率を大幅に高め、ケガのリスクを減少させることが確認されました。
結論として、軍隊における健康施策において、専門家による対面教育を取り入れることで、MVMの服用遵守率向上とケガリスクの低減が期待できるとしています。
本研究のメッセージには二つの重要な点があります。一つ目は、MVMの摂取が軍隊訓練中の外傷予防に役立つこと。二つ目は、対面で説明を受けた方がMVM摂取率の向上につながるという点です。これは一般の場合でも同様であると考えられます。テレビなどのメディアの情報だけで購入したサプリメントよりも、専門家の説明を対面で受けた上で摂取したサプリメントの方が摂取率も高くなり、効果も期待できると考えられます。
- MVMの配合には、ビタミンA、B群、C、D、E、Ca、鉄、亜鉛が含まれていました。