口腔内細菌と認知症

アポリポタンパクE4(APOE4)という遺伝型や、一酸化窒素(NO)の不足は、認知機能の低下に関わるリスク要因とされています。一方では、口腔内の微生物(口腔マイクロバイオーム)は、加齢に伴うNOの産生量を維持する重要な役割を果たしていることがわかっています。最新の研究では、軽度認知障害(MCI)を持つ60人と健康な60人を対象に、口腔マイクロバイオームやNOの産生量と認知機能との関係を調べています。さらにMCIグループの中でAPOE4遺伝型を持つ人と持たない人の口腔内細菌を比較しています。

その結果、MCIを持つ人の口腔内でNeisseriaという細菌が多い場合、実行機能や視覚的な注意力が良好であることがわかりました。一方、健康な人でもNeisseriaが多いと作業記憶が向上する傾向が見られました。また、HaemophilusやHaemophilus parainfluenzaeという細菌がNeisseriaとともに存在する場合、MCIの人の実行機能がさらに改善されることが示されました。

一方、Porphyromonasという細菌はMCIの発症と関連があり、Prevotella intermediaという細菌はAPOE4遺伝型を持つ人に多いことがわかりました。これらの結果から、口腔内のNeisseriaやHaemophilusを増やし、PorphyromonasやPrevotellaを抑えるような介入(例えば特定の食事)が、認知機能の低下を遅らせる可能性があると考えられます。

この研究は、口腔の健康を維持することが脳の健康にもつながる可能性があることを示しており、予防的なケアや食生活の改善が認知症リスクを軽減する手助けとなるかもしれません。

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