自分のフェリチン値をご存知ですか?

前号では鉄欠乏貧血について述べました。一番簡単な血液検査でも、鉄が足りているかどうかをおぼろげながら確認することはできます。しかし正確に知るには今少し詳しい検査を受けることが必要です。一般的な保険診療では血清鉄を調べることが勧められているようですが、血清鉄を調べることでは鉄が足りているか否かを知ることはできません。鉄の過不足を知るためには「フェリチン」という指標を調べなくてはいけません。

フェリチンとは鉄を蓄えるタンパク質のことです。鉄をお金に例えるならば、血清鉄がお財布の中のお金とすると、フェリチンは銀行に預けてある貯金ようなものです。血清鉄濃度は体調などによって大きく変化することがありますが、フェリチン値は比較的安定していますので、身体に蓄えられている鉄の目安として理解することができます。フェリチンは鉄欠乏状態では当然のことながら低値を示します。

注意が必要なことは、肝炎などの炎症がある場合や再生不良性貧血などの血液疾患がある場合にはフェリチン値が上昇してしまうことです。悪性腫瘍によっても数値が高くなることが知られています。このため鉄欠乏状態の方が肝炎などをおこすと鉄欠乏についての診断が難しくなります。フェリチンの値を正確に理解するためには専門的な知識が必要です。

閉経前の女性ではフェリチン値は低い傾向があります。これは生理によって血液が失われ鉄が不足するために起きる現象です。反対に閉経後の女性や男性ではフェリチン値は高い傾向がみられます。フェリチンは高値になると身体の酸化ストレスを増やし、動脈硬化などの老化現象を進める原因となると考えられています。鉄は身体にとってはなくてならない重要なミネラルですが、摂りすぎることは身体にとってのリスクを増やすことにもつながります。

的確な鉄補充は健康管理の基本です。自分自身のフェリチン値を知ることが、鉄を補充すべきか否かの重要な指標となりますので、是非とも血液検査を受けてフェリチン値を確認しましょう。フェリチンの至適値には、諸説がありますが、当院では、100 ± 20 ng/ml と考えています。 200 ng/mlを越えると動脈硬化のリスクが増えると言われていますので鉄過剰と診断します。一方、40 ng/mlを下回れば鉄不足と診断しています。

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