成人の体内には約30gのマグネシウムが含まれます。このうち60%が骨に、27%が筋肉中に存在しています。血液中を流れているマグネシウムは全体の1%にしかすぎません。その働きは多岐にわたり、300種以上の酵素反応の補助因子であり、なかでも重要な働きは、細胞のエネルギー源であるATPを作り出す補酵素としての役割です。マグネシウムがなければ細胞はエネルギーを作り出すことができません。このためマグネシウムは細胞内に多く存在しています。
今ひとつの重要な働きが、カルシウム濃度の調節を行うことです。細胞内のマグネシウムが減少すると、カルシウム濃度が上昇し細胞代謝に障害が生まれてしまいます。明け方に足が「つる」症状で目覚めたことはないでしょうか。筋肉が引きつって痛みも伴いますのでできれば起きて欲しくない症状ですが、これは細胞内マグネシウムが減少しているひとつのサインです。
マグネシウムは細胞内に多く存在する大切なミネラルの一つですが、過度な運動などのストレスがかかると減少してしまいます。また加齢によっても細胞内マグネシウム濃度が減少することが知られています。筋肉の収縮はカルシウムが働くことで生まれますが、収縮した筋肉を弛緩させる働きはマグネシウムによって起きます。マグネシウムがないと一度収縮した筋肉を元の状態に戻すことができないわけです。
細胞外に多いカルシウムと細胞内に高濃度で存在するマグネシウム。これらの二つのミネラルは働きが拮抗しているためブラザーミネラルとも呼ばれています。マグネシウムが不足すると前述したように筋肉の弛緩がおきにくくなるため、筋肉の痙攣が起きやすくなります。同じ現象が血管壁にある筋肉で起きれば、血管が勝手に収縮してしまう血管攣縮(れんしゅく)とよばれる状態が生まれ高血圧や狭心症の原因となります。消化管の細胞にマグネシウム不足が生じると腸管の動きが悪くなり便秘の原因となります。
マグネシウムを補充するにはどのようにしたらよいのでしょうか。自然界でマグネシウムを多く含む生物は植物です。葉緑素のクロロフィルはその構造の中心にマグネシウムが存在します。木の実にもマグネシウムは豊富に存在します。砂糖の弊害を無視できるならば、カカオ豆から作られるチョコレートはマグネシウム補給には適した食材です。珈琲、大豆製品、海草類もマグネシウムを多く含む食材です。成人で一日あたり約400〜600 mgのマグネシウムを補給する必要があるといわれていますのが、現代人の平均的な食生活では十分にカバーできていないようです。
マグネシウムの効用
1. 血圧コントロール
2. 糖尿病予防
3. 心臓血管病予防
4. 骨粗鬆症予防
5. 偏頭痛予防
6. PMS(月経前症候群)に伴う症状の緩和