男性ホルモンの働き

東洋医学では陰陽理論によって人間の症状や体質を説明することがよくあります。物事の本質を全体的に捉える上では極めて便利な説明方法です。例えば、男性は陽で女性は陰、動脈は陽で静脈は陰、動くものは陽でじっとしていることが陰など、相対的な事象は、ほとんどの場合、陰陽理論に当てはめることができます。 男性ホルモンは、陽のホルモンであり、その特徴は、外へ出て行く力を生み出す源です。筋肉を作り、筋力を増やすこと、決断力や意欲を増強させる働き、記憶力の維持など、日常生活の質を高めるために男性ホルモンが重要な働きをしています。

男性ホルモンは、男性だけでなく、女性にとっても男性と同様に重要な働きをしています。その代表的なものは、意欲や記憶力の維持、そして筋肉量や骨量の維持です。閉経後の女性では、エストロゲンなどの女性ホルモンが減少するだけでなく、男性ホルモンも枯渇してしまう傾向があります。このため女性では骨粗鬆症が起きやすくなります。

草食系男子という呼び名も違和感がなくなりましたが、ある研究によるとこうした男性では、実際に男性ホルモン値が低い傾向がみられるようです。また男性が育児休暇を取るということも推奨されていますが、生物学的には男性が育児に専念すると男性ホルモンレベルが減少することも報告されているようです。

一方、男性ホルモンの低下はうつ病の原因にもつながります。身体運動をせず、心理的ストレスが過剰になると、男性ホルモンを分泌する機能が低下します。現代の企業戦士にうつ病患者が増えつつあることの一つの原因に、男性ホルモンの低下があると考えられます。

男性ホルモン低下症を疑う時には、こちらのサイトに問診票がありますので、自己診断をされることをお勧めします。 男性ホルモンが低下した場合の治療にはいくつかの方法があります。精神的なストレスを減らすこと、運動をすること、甘いものの摂取量を減らし良質なタンパク質の摂取量を増やすことなどは、すぐに始めることができる対処方法です。これでも効果がでない場合には、抗加齢医療や泌尿器科の専門医の治療を受けることになります。

血液中の男性ホルモンレベルが低値であれば、男性ホルモンを補充する治療が必要になる場合もあります。 最近では、男性ホルモンについての書籍も数多く出版されています。本日は学生時代からの恩師である、熊本悦明先生(札幌医科大学名誉教授)の新刊をご紹介します。

数えで米寿を迎える熊本先生ですが、男性ホルモン補充療法の効果を60年前から提唱されていた、この領域の先駆者です。80歳でエベレスト登山に成功した三浦雄一郎さんの、健康管理の助言者としても知られています。1980年頃、私が北海道大学の学生であった時に熊本先生の講義を拝聴した記憶があります。あれから30年以上が経ちましたが、男性ホルモン補充をご自身実践されておられる熊本先生のお元気さは全然衰えていません。ピシッと伸びた背筋には若々しいエネルギーを感じます。熊本先生の最新刊、すばらしいタイトルです。ご一読をお勧めします。

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