チョコレートの主成分はカカオ豆からとれるカカオマスです。カカオマスにはポリフェーノルの一種であるカカオポリフェノールが含まれますが、この健康作用に注目が集まっています。これまでは海外の研究が主たるものでしたが、近年では日本人を対象にしたチョコレートの健康作用についての研究成果も発表されています。
蒲郡市で行われた研究では、45〜69歳の男女347名を対象に4週間にわたりカカオ72%含有のチョコレート25gを摂取し、血液中の指標の変化を調べています。その結果、BDNF(Brain Derived Neurotrophic Factor)と呼ばれる脳神経細胞を増殖させる血液中の成分が有意に増加することがわかりました。BDNFは加齢にともない減少する傾向があり、これが低下するとうつ病にかかりやすくなることや、認知力の低下が生じることが知られています。チョコレートを食べることでBDNFが増加するということは、チョコレートにはうつ病や認知症の予防効果があると言えます。
チョコレートに含まれるテオブロミンという成分には、善玉コレステロールと呼ばれるHDLコレステロールを増やす効果があることも知られています。HDLコレステロールを増やす方法には、運動することや適量のアルコールを摂取することが言われていますが、チョコレートを食べることでHDLを増やすことができることは、多くの方にとって朗報です。この効果を裏付ける現象として、チョコレート摂取により炎症反応の指針である高感度CRP(hs-CRP)が下がることや、酸化ストレス反応の指標である尿中8OHdG濃度の低下がみられることも報告されています。
このほかのチョコレートの効用としては、心疾患リスクの軽減、血圧降下作用、インスリン抵抗性改善(糖尿病予防)など多様なものが報告されています。一点注意すべきポイントはこうした研究で使われているチョコレートはカカオ70%以上のものであり、市販の甘い製品とは異なる点です。高カカオチョコレートを大量に摂ることはかえって健康を害する可能性も指摘されています(国民生活センター資料)。しかし、ちょっと苦めのチョコレートを少量摂取することは、心身ともに健康作用が期待できるようですので、美味しいチョコレートを食生活の中で上手に活用したいものです。