和食といっても様々な内容がありますが、日本ほど発酵食品に恵まれた国は、世界広しといえども他にはありません。漬け物の種類は1000種以上、味噌や納豆のごとく大豆を発酵させた食品、だしには欠かせない鰹節、そして日本酒や焼酎など、すべて発酵という過程を経て生まれた食材です。
なかでも興味深いものが、麹菌です。日本酒を造る際に、蒸した米にまんべんなく振りかける麹菌は、別名「米麹」とも呼ばれ、日本にしか生息していない珍しい生命体です。米麹のことをわが国では「糀」と表記することもありますが、これは実に見事な表意文字です。蒸した米の表面に、まるで花が一面に咲いたようにみえる、麹の特徴をよく表しています。
中国で酒造りに利用する麹は、麦を発酵させるためのもので「麹」という字がふさわしいのですが、わが国では米を使った日本酒が多いので、「糀」という字を使うことの方が、本来の意味に近いようです。糀はデンプン質を分解してブドウ糖に変える働きが有ります。
本来の甘酒は、蒸した米と糀だけで作りますのでアルコールは全く含まれません。 江戸時代には夏の健康ドリンクとして甘酒が珍重されていたようですが、糀は米のデンプン質をブドウ糖にかえるだけなく多種のビタミン、ミネラルも豊富に作り出す力があるため、甘酒はまさに栄養ドリンクのような内容成分となっています。
お酒が苦手な方でも甘酒を飲むことで栄養補給が可能です。ただし糖分が多めですので飲み過ぎには注意が必要です。ちなみに酒粕に砂糖を入れて作る即席の甘酒は「粕汁」とも言われます。酒粕も発酵食品の一つです。酒造り真っ最中のこの時期は、酒粕も入手しやすいので料理に活用されることをお勧めします。