COVID-19感染により、2020年の初頭の米国の死亡者数は例年よりも大幅に上昇しました。例年の死亡者数よりも多くの死亡者が出た場合に、これを超過死亡者と呼びます。
この超過死亡者の内訳を精査したところ、COVID-19感染症による死亡例は、超過死亡全体の65%程度にすぎませんでした。残りの35%は、心臓病、糖尿病、脳血管疾患、アルツハイマー病による死亡であることが、最新研究によって明らかにされています。(上図)
この研究によれば、2020年3月1日~4月25日の期間、米国で約50万例の死亡が報告されています。過去5年間の平均死亡者数は約41万例ですので、超過死亡者数は約9万例と推計されます。このうちCOVID-19による死亡が65%(56,246例)を占め、一方、COVID-19以外の基礎疾患に関連する死亡は30,755例であり、超過死亡例のうちの35%を占めていました。
最も人口が多いカリフォルニア州とテキサス州を含む14州では、超過死亡の50%以上がCOVID-19以外による疾患によるものでした。カリフォルニア州=55%、テキサス州=65%。
また、COVID-19による死亡者数が最も多い5州では、COVID-19のピーク時(3月1日~4月11日の週)にCOVID-19以外の原因による死亡者が急増していました。これらの州では、糖尿病による死亡患者数は、今年1~2月の週平均に比べて96%、すなわちほぼ倍増となっていました。さらに、心疾患は89%、アルツハイマー病は64%、脳血管疾患は35%、それぞれCOVID-19感染ピーク前の平均値よりも増加していました。中でもニューヨーク州では、心臓死が398%、糖尿病死が356%と著明に増加していることが注目されます。
これらのデータは、COVID-19感染に伴う外出規制や病院の対応機能の低下などにより、心臓疾患や糖尿病など、定期的な診察治療が必要な患者に対するケアーを充分に行うことができなくなったことを示唆しています。
日本における超過死亡の詳細なデータは公表されていませんが、東京都では昨年第49週~今年第13週に予測死亡者数の閾値を上回り、超過死亡が観察されています。しかしその内容は、過去3シーズン並みか、やや低い傾向にあったということです。
日本の場合には、昨年インフルエンザによる死亡者数が約3300名ですので、季節性感染症による死亡者数の総数で見ると大きな変化がないのかもしれません。しかし米国の状況を見ると、COVID-19感染そのものではなく、既往疾患による死亡者数の増加が顕著であったようです。
この原因が、医療崩壊によるものか、またはロックダウンに伴う外出規制によるものであるのかについては明らかではありません。しかし、今後やってくるであろう新型コロナウィルス第2波に対する備えとして、既往疾患を持つ患者に対する対応を考慮する必要があります。
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