新著紹介: Life Span …老いなき世界

新著のご紹介です。著者はデイビット・シンクレア博士。長寿遺伝子サーチュインの発見とこれに関連してレスベラトロールで話題になった先生です。現在はハーバード大学の基礎研究部門の教授を務めています。

抗加齢医療は1990年発表された、成長ホルモンを注射すると筋肉量が増えて生活のQOLも改善するというDr.Rudmanらの研究から始まりました。2000年初頭には、成長ホルモン=若返りの秘薬ということで、随分と話題になったことが懐かしく思い出されます。米国の学会に行くと40代くらいの医師が、成長ホルモンの自己注射を積極的に勧めていたことが印象に残っています。もちろん現在では、闇雲に成長ホルモンの注射をすることは臨床的に認められていません。しかし当時は市場原理も働きホルモン注射がブームのようになっていたようです。

しかしその後も老化についての基礎研究は着実に進行していました。こうした背景からシンクレア教授の業績が生まれたと言っても過言ではありません。「老化は一種の病気」これはセンセーショナルな概念でした。我々はなぜ老化するのか、正確には理解していませんでした。しかし基礎研究の結果、遺伝子の発現をコントロールするエピゲノムを調整することによって、遺伝子の老化を防ぐことができるとされています。

本書では基礎研究の成果について述べているだけでなく、間欠的断食、肉食の制限、運動の勧め、サウナの効用など、我々一般人が今日からでも取り組むことのできる、抗老化の生活習慣についても述べています。さらに抗老化のための栄養素として注目を浴びている、レスベラトロールやNMNなど最新の情報も紹介されています。

シンクレア教授のこれまでの業績の集大成と未来医学への提言について、上手にまとめられている良書だと思います。

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