毎年開催しているキレーション治療セミナー。今年は16回ということでしたが、新型コロナウィルスの影響も考慮し、初めての試みとして Zoomによるセミナーを行いました。おかげさまで例年以上に多くの先生方のご参加をいただき、無事に終えることができました。当日(10月18日)のプログラムは以下のようなものです。
- 水素研究の最前線 (60 min)
- 佐野元昭 …慶應義塾大学医学部循環器内科・水素ガス治療開発センター
- オメガ3脂肪酸代謝による生体制御 (60 min)
- 有田誠 …慶應義塾大学薬学部教授
- COVID-19: 米国の状況、予防と治療 (60 min)
- Ahvie Herskowitz, MD …. ACAM 会長
- COVID-19:救急医療現場の実際 (30 min)
- 松田剛明 …… 杏林大学救急医学教室 教授
- アンチエイジング医学アップデート2020 (60 min)
- 坪田一男…. 慶應義塾大学医学部眼科学教室 教授
- COVID-19: Vitamin D の効用 (30 min)
- 満尾正….. 満尾クリニック
水素ガスの臨床応用の進歩は刮目すべきものでした。佐野先生はこの領域のトップランナーです。急性心筋梗塞の治療として活用されてきた水素ガスですが、近年では、臓器移植の保存液にも活用され、臓器の保存期間を伸ばすことや、これまでは利用することのできなかった臓器を移植できるようにしたことは驚きでした。また水素ガス発生機器類にも様々な進化が見られ、今後の臨床応用が期待されます。
脂肪の領域の研究も日進月歩です。有田先生はこの領域のスペシャリストです。インフルエンザ感染を予防することで注目を集めたオメガ3脂肪酸ですが、今年は、COVID-19対策としてもそのメカニズムについての研究が進行中です。炎症を抑える脂肪酸と、炎症を進めてしまう脂肪酸。それぞれのメカニズムや、どのような脂肪酸が働いているのかについての研究も着々と進行中です。
ACAM理事長のHerskowitz先生の講演内容は、米国におけるCOVID-19の現状についてでした。中でも印象的であったことは、医療関係者の死亡者数が700名にも達しているということです。日米の感染者数や死亡者数の差異についての理由については、米国における肥満者の増大に見るように、基本的な健康管理の問題ではないかというご意見でしたが、正確なところは不明です。ヒドロキシクロロキンの臨床使用経験なども伺えた貴重な内容でした。
杏林大学の松田先生からは、大学付属病院の救急部におけるCOVID-19対策についてお話しいただきました。日本の現況がよくわかる内容でした。またCOVID-19は、疫学的な問題だけでなく、社会経済学的な課題も我々に提示していることが、大学病院の現場の様子から理解できました。
毎年ご講演いただいている坪田先生からは、アンチエイジングに関連するいくつかのテーマをお話しいただきました。中でも興味深い話題は、自然光が人間の健康を促進している可能性です。外出自粛などで、自然光を浴びる機会が減ることは、2次的に余病を生み出す可能性が指摘されています。自然光は近視の予防だけでなく、認知機能の維持のためにも働いている可能性があるということです。
今年も各分野でご活躍されている先生方にお手伝いいただき、最新情報について学ぶ機会を得ることができました。ご講演いただきました先生方に、心より御礼を申し上げます。