血液中のビタミンD濃度が最も下がる時節は、まさに今、大寒の時節です。
冬の日差しは紫外線も弱く、また寒さで肌も露出していませんので、散歩をしてもほとんどビタミンDは作られません。一方、冷蔵庫の中のような気温は、ウィルスにとっては好都合な条件であり、その形や機能を長く保つことができます。免疫力を維持するビタミンDが下がり、ウィルスの感染力が長持ちするこの時節に、インフルエンザやコロナウィルスが広がりやすいことは至極当然です。
ビタミンD濃度をどの程度に維持するべきなのか、欧米の研究機関や論文では、25(OH)D濃度が 20 ng/ml未満を欠乏、20~29を不足、30以上を正常、40~60を至適濃度としています。また副作用を懸念すべき高値は150ng/ml とされています。
ビタミンDの代謝は数段階に渡るもので、医者でも性格に説明できる人は少ないかもしれません。血液中のビタミンD濃度は25(OH)Dについて調べます。これは、皮膚で作られたビタミンDが肝臓で代謝されてできるものです。しかし、ビタミンDとして働くためには、もう一段階の代謝を経て、活性型ビタミンDになることが必要です。逆にいうと25(OH)DにはビタミンDの働きがありませんので、多少高濃度でも活性化ビタミンDが増えなければ副作用の心配をしなくても良いと言えます。
当院の外来でも、毎日25,000IUのビタミンD3を服用されていた方がおられました。当然のことですが、この方のビタミンD血中濃度は150ng/ml以上に上昇していました。しかし、幸いなことに過剰摂取による副作用は全くみられませんでした。これは25(OH)Dが活性型ビタミンでないことの良い証拠です。
なぜ毎日、25,000 IUものビタミンDを摂取していたのでしょうか? 実はこの方が摂取されていた製品は、1cap中に25,000IUのビタミンD3が含まれていました。何かの誤りかと思われる方もおられると思いますが、これは、週に1回だけ服用するために作られているビタミンD製剤でした。
ビタミンDは脂溶性ビタミンですので、水溶性ビタミンであるビタミンBやビタミンCと異なり、飲みだめすることができます。欧米では高齢者施設などでスタッフの手間を少なくするために、週に一度だけ1カプセルを服用するために、こうした製品が販売されているわけです。
乳幼児にはビタミンDのサプリメントが必要なのでしょうか。母乳で育てられている乳児の場合、母親の血中ビタミンD濃度が母乳中にも反映します。母親に十分なビタミンDがない場合には、乳児でもビタミンDをサプリメントで補充する必要があります。欧米の学会の推奨する、1日あたりのビタミンD摂取量は、以下のようになります。
- 乳児 ….. 400 〜600 IU (10 ~ 15 μg)
- 小児 ….. 600 〜 1000 IU (15 ~ 25 μg)
- 成人 …. 1500 〜 2000 IU (37.5 ~ 50 μg)
肥満者の場合には、通常摂取量の2〜3倍必要になります。これはビタミンDが脂溶性であるため脂肪細胞の中に吸収されてしまい、血中濃度が上がらないためです。また脂肪肝など肝機能障害がある場合にもビタミンDを多めに摂る必要があります。ビタミンD を積極的に補充して、この時期を乗り切りましょう。