2月21日のセミナーにご参加いただきました皆様に御礼申し上げます。次回は4月11日、新しい医療のお話をさせていただきます。日程が近づきましたら、内容のご紹介をしたいと考えております。
本日は、ビタミンB12とホモシスティンとの関係についてお話いたします。このブログでも度々ご紹介しているホモシスティン検査ですが、日本ではなかなか広く受け入れられていません。人間ドックの検査項目に取り入れている医療機関の数はまだまだ少ないようです。
ホモシスティンとはメチオニンというアミノ酸の代謝物で、 その濃度が高くなると、血管障害や認知機能の低下の原因となると言われています。肉食が多い場合や、ビタミンB12などのビタミン摂取量が低い場合、また遺伝的に高値となる場合があります。
ホモシスティンによる弊害が初めて記録されたのは、1930年の症例報告とされています。8歳の男児が脳梗塞で死亡し、調べたところ全身に広がった動脈硬化が見つかりました。しかし、なぜこのような低年齢で動脈硬化が進むのか、その理由については不明でした。
その原因が明らかにされたのは、約30年後のことでした。8歳男児の姪にあたる9歳の女児が、知的障害の検査のためにボストンの基幹病院を受診したことで、ホモシスティンと動脈硬化や認知機能障害との関係が医学的に注目されるようになりました。これらの2症例は、遺伝性疾患の高ホモシスティン尿症と診断されました。
欧米では、ホモシスティンが上昇することで、動脈硬化性血管疾患のリスクが高まることは広く知られるようになっています。日本でこの検査が普及しない一つに理由に、ビタミンB12などのビタミン剤でホモシスティンを下げることができるためとも言われています。つまり医薬品の力を借りなくても、適正なホモシスティン値を維持できるわけです。
COVID-19では、血管内皮の障害が注目されています。そのために脳血管疾患や認知機能の低下を引き起こすことも懸念されています。ホモシスティン値が高い場合には、こうした状況が起きやすくなることが予想できますので、一度はホモシスティン濃度がどの程度であるのかを知っておくことは有意義です。