コエンザイムQ10とミトコンドリア機能

COVID-19感染による死亡者には高齢者が多いことが知られています。この理由として、高齢者ではミトコンドリアの機能低下が起こり、結果として免疫老化が起きることが原因とされています。

ミトコンドリアは、細胞の中に含まれているエネルギー製造工場のようなもので、細胞にとってのエネルギー源であるATPと呼ばれる成分を作り出しています。その製造工程は芸術的とも言える繊細で緻密な仕組みとなっています。しかし、一方ではATPを作るための部品が少しでも足りなくなってしまうと、その機能が大幅に低下してしまうリスクもあります。

ミトコンドリアの機能を保つために必要な成分のうち、最も重要なものにコエンザイムQ10があります。コエンザイムQ10は1957年に米国で発見され、ミトコンドリアがATPを産生するときに働く電子伝達系と呼ばれる一連の反応に欠かすことのできない成分であることが確認されました。

しかしコエンザイムQ10は、加齢とともに細胞内濃度が減少してしまうことが知られています。このため、加齢に伴いミトコンドリアの機能異常が起きると考えられています。コエンザイムQ10が減少する割合は臓器によっても異なります。中でも減少度合いが激しい臓器が心臓であり、80歳以降では20代の42 %にまで減少、次は肺であり52%にまで減少するという報告があります。

体内のコエンザイムQ10の半分は食品から、残りの半分は肝臓で作られています。食品でコエンザイムQ10を多く含むものの代表はイワシ。そのほかでは肉類や野菜のブロッコリーに多く含まれます。しかし食品中に含まれるコエンザイムQ10の量はさほど多くありませんので、補充目的であれば栄養サプリメントに頼ることが必要だと思います。

コエンザイムQ10が減少するもう一つの原因に医薬品摂取があります。コレステロールを下げる薬であるスタチン系の医薬品は、その作用機序からコエンザイムQ10も作れなくなることが知られています。(下図参照)やむを得ない理由でこうした医薬品を服用しなくてはならない方は、コエンザイムQ10をサプリメントで補充されることをお勧めします。

J Am Coll Cardiol. 2010 Oct 5;56(15):1196-204.
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