新型コロナウィルス感染予防には、自分自身の免疫機能を維持することが最善策です。この免疫機能を維持増強するために欠かすことのできない栄養素が「亜鉛」です。しかし亜鉛は、ビタミンDやマグネシウムと並んで、現代人の食生活に不足しているミネラルでもあります。最新の研究では、亜鉛欠乏状態にあるCOVID-19患者では、重症化するリスクが5.5倍も上昇すると述べられています。
この研究では、COVID-19患者47名と健常者45名について血中亜鉛濃度とCOVID-19感染症との関係について調べています。その結果、健常者の血中亜鉛濃度は平均で106 μg/dLであったのに対して、COVID-19患者群では約30%も低値の74.5 μg/dLでした。さらにCOVID-19患者群のうち亜鉛の血中濃度が低い患者では、ARDSなどの合併症を併発する率が高くなり、重症化する割合が大きく、死亡率も大幅に高くなっていました。
亜鉛の血中濃度は80μg/dL以上が望ましいとされています。本研究では、COVID-19感染症患者の血中亜鉛濃度の平均値は、75 μg/dlであり、この数値では潜在的亜鉛欠乏状態にあったと考えられます。当院外来患者約1700名の血中亜鉛濃度の平均値は、男性で85、女性で83 μg/dLです。しかし血中亜鉛濃度は高齢者ほど減少する傾向が見られ、男女ともに70歳代になると、下図のように、至適濃度である80 μg/dL未満になってしまっています。
1日あたりの亜鉛必要量は、10~15 mgとされていますが、現代人の食生活ではこの量を摂取することは極めて難しい状況です。また加齢によって亜鉛濃度が下がる原因として、消化管からの吸収が低下することが指摘されています。さらにビタミンDが低い方では、亜鉛の吸収が低下している可能性もあります。
コロナ対策の一環として、血中亜鉛濃度を適正値に保つことは、感染予防につながる大切なポイントです。ビタミンD補充と合わせて亜鉛も補充することをお勧めします。