外来でよく尋ねられるテーマの一つが、がんを予防する生活習慣です。何を食べて、何を避ければ良いのか。運動はどの程度行うのが良いのか。これらをまとめた研究がありませんでしたが、つい1ヶ月ほど前に、スイスの研究者らが一つの答えを出してくれました。
この研究は、約2000名の70歳以上の男女(女性62%)を対象として、サプリメントによってビタミンD、オメガ3脂肪酸を補充し、室内運動を行なった群(A群)とこれらを行わなかった群(B群)とに分けて、発がん率の変化について調べています。試験期間は2012年から2017年までの5年間です。
平均約3年間の調査期間中に、がんの診断を受けた対象者は81名いました。A群、B群で発がんのリスクについて比較した結果は以下のようになりました。
Hazard Ratio とはがんになる確率(リスク)のようなものと考えてください。ビタミンD3だけをとった人では摂取しない人よりもがんになるリスクが76%、すなわち24%も低下しているという結果を示しています。ビタミンD3、オメガ3脂肪酸、室内運動の3項目のうち2項目を行なっていた人では、発がんリスクがさらに低下し、52~56%となり、3項目全てを行なった人ではなんと39%にまで低下していました。
今回の研究では、ビタミンD3は1日あたり2000 IU/日を摂取、オメガ3脂肪酸は1g/日を摂取しています。SHEP(simple home strength exercise)とは室内でできる簡単な運動のことですが、運動の内容の詳細については、論文中に記載されていませんでした。70歳以上の男女の発がん予防には、これらの生活習慣を取り入れることが有益だと考えられます。